なんでもブラジルは世界各地を回りながら、年間10試合のAマッチを行う契約があったという(『スポーツ東亜』サッカー担当記者談)。
そのひとつが11月16日にサウジアラビアで行われたアルゼンチン戦だったが、中東でもう1試合する必要があり、複数の国と交渉していた。
そんななかで昨年末、第三者を通じてKFAにも関心があるかとの接触があったそうだ。
1990年代後半からKFAの国際部でキャリアをスタートさせ、2002年ワールドカップではフース・ヒディンク監督の通訳を務め、現在はKFAの事務方トップであるチョン・ハンジン事務総長によると、「今年の上半期あたりからブラジルは韓国代表とのマッチメイクに傾き始めた」という。
また、「中東で試合するならイランやサウジでも良かったはずだし、イスラエルやウルグアイも対戦候補として挙がっていたと聞いている。それでも頻繁に対戦する南米勢ではなく、ブラジルはあえて韓国を選んだ」という別のKFA関係者の言葉もある。
こうした証言もあって、韓国では「ロシアW杯でドイツを破った韓国の実力をブラジルが認めたからだ」という見方もあるのだが、いずれにしてもブラジルからのオファーはKFAにとっても悪くない話だった。むしろパウロ・ベント監督体制になって強豪国との対戦が少なかっただけに、絶好の機会でもあった。
ただ、KFAとしては今年最後のAマッチを韓国で行いたいという考えもあったらしい。
というのも、今や韓国代表のAマッチはソン・フンミンやイ・ガンインらの人気もあって、ドル箱だ。12月に釜山(プサン)で開催されるE-1チャンピオンシップもあるが、欧州組は招集できない。興行面でも収入面でも韓国でAマッチを実施したほうが、得られるものが多いのだ。
そんなKFAの懸念材料を払拭すべく、ブラジルサッカー協会はKFAに対して、韓国国内での試合中継権料は譲ったという。「それによってKFAは約15億ウォン(約1億5000万円)の収入を確保したらしい」というのが、『スポーツソウル』サッカー担当記者の説明だ。
ブラジル代表という世界トップクラスのチーム相手に腕試しができ、なおかつ実利も得られる。韓国代表とKFAにとって、ブラジル戦はちょっぴり早いクリスマスプレゼントとは言いすぎだろうか。
いずれにしても、ブラジル戦の試合結果はさておき、韓国代表にとっては「今年最後にして最高のAマッチ」となった。
(文=慎 武宏)