自分を慰留したければ、“チノ”を残せということだろうか。
韓国代表MFイ・ガンイン(22)らが所属するマジョルカの指揮官で、過去に日本代表も率いたハビエル・アギーレ監督の“要請”が話題だ。
スペインメディア『マルカ』は5月25日(日本時間)、「アギーレ監督が契約延長の条件としてイ・ガンインら数選手の残留を要請した」と報じた。
マジョルカは今シーズン、現時点で20チーム中12位と期待以上の成績を収めている。ラ・リーガ屈指のテクニシャンに成長しているイ・ガンイン自身のポテンシャルに加え、アギーレ監督の指導力が備わった結果だ。
もっとも、良い雰囲気を楽しんでいるばかりではいられない。というのも、イ・ガンインに向けた人種差別事件が発生したからだ。しかも、その当事者はアギーレ監督だ。
アギーレ監督は最近、マジョルカの公式SNSで公開された動画内で、イ・ガンインに人種差別的な表現を使ったとして批判を受けている。指揮官はイ・ガンインのシュートが外れた際、突如「チノ(Chino)!」と叫んでいた。
「チノ」とは「中国人」を意味するスペイン語で、東洋人を蔑んで呼ぶ際の人種差別的単語とされている。バレンシア下部組織出身で幼い頃からスペインで暮らしてきたイ・ガンインも十分よく理解している単語だ。
実際、イ・ガンインは2年前、YouTubeチャンネル『Shoot for Love』に出演した際、「どこに行っても中国人が多いから、東洋人に対して“チノ”と言う」とし、人種差別の事例を自ら説明していた。
もっとも、今回アギーレに「チノ!」と言われた際、イ・ガンイン本人はあまり気にしていない様子だった。アギーレの声が聞き取れなかったかもしれないが、かなり大きく叫んでいただけに聞こえていた可能性は高い。それでも、イ・ガンインは平気な様子で、その後も変わらず練習を続けていた。
問題は、マジョルカが問題を認識できていなかったという点だ。
仮に人種差別発言の深刻さを十分理解していれば、動画を編集する過程でアギーレの声は除去していただろう。ただ、それがなされていなかったということは、それだけ彼らにとって「チノ」という言葉が慣れているというわけだ。
そもそも、イ・ガンインは過去にもアギーレ監督から「チノ」と呼ばれたことがある。
とあるネットユーザーが公開した動画によると、アギーレ監督は練習中、イ・ガンインに向かって「何しているんだ、チノ?」と語りかけたことがあるという。
マジョルカの練習場では「チノ」という言葉が浸透しているようだ。だからこそアギーレ監督はイ・ガンインを「チノ」と呼び、クラブも違和感を抱かないまま動画を公開した。
アギーレ監督がイ・ガンインの恩師であることに変わりはないが、彼の言動が示す意識不足が如実に表れた部分と言えるだろう。
そんななか、アギーレ監督は自身の契約延長の条件としてイ・ガンイン残留を要請した。
過去にはマジョルカの試合が韓国ファンに合わせて日中キックオフが多いことに不満を示し、「韓国人は試合を観ないで」と発言したこともある指揮官だが、『マルカ』によると「アギーレ監督はマジョルカの契約延長オファーに対し、余裕のある態度を見せている」という。
同メディアは「アギーレ監督がメキシコリーグからオファーを受けた。彼は残留のため、クラブに一部選手の去就を決めてほしいと要請した」とし、「アギーレ監督は、クラブに契約延長のためイ・ガンインの残留を要請した。彼はクラブがイ・ガンインを守るための努力をしてこそ、契約延長交渉に臨むと伝えた」と付け加えた。
普段の練習からイ・ガンインに人種差別表現を用いていたアギーレ監督。そんな彼が、自身の契約延長条件としてイ・ガンイン残留を要請したのは皮肉な状況と言えるだろう。
(記事提供=OSEN)
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