一本の映画でもこれほど完璧なストーリーはない。ドラマのような始まりと、ドラマのような結末だった。
2023年WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)は、大谷翔平(28、ロサンゼルス・エンゼルス)のために作られた“野球漫画”だった。
メジャーリーグ最高のスターであり、侍ジャパンの象徴である大谷は、大会初戦に先発登板して勝利に導いた。そして決勝では、最終9回で1点リードを守るセーブを記録し、日本に優勝トロフィーをもたらした。
すでに“二刀流”でメジャーリーグの頂点に立った大谷。2021年には満場一致でア・リーグMVPに輝き、昨季もMVP投票で2位につけた。
WBCの舞台は今回が初めてだった。北海道日本ハムファイターズ時代の恩師である栗山英樹監督が侍ジャパンの指揮官を務める縁もあり、大谷は早期からWBC出場の意思を明らかにしていた。
多くのメジャーリーガーが参加する世界最高の野球大会WBCで優勝するという熱望は、大谷が誰よりも大きかった。
大谷はエンゼルスの春季キャンプで投手として1試合のみ登板し、侍ジャパンに合流した。そして、WBC本番でも“二刀流”を貫いた。
1次ラウンド・プールB初戦の中国戦では先発投手兼指名打者として出場した。投手として4回1被安打、5奪三振の無失点という好投を見せると、打者では4打数2安打、2四球、2打点を記録する大活躍を披露した。
大会2度目の“二刀流”は準々決勝のイタリア戦だった。試合ではエンゼルス同僚のデービッド・フレッチャー(28)との直接対決も繰り広げ、相手を2打数1安打に抑えた。
大谷のイタリア戦成績は、投手で4.2回4被安打、1四球、2死球、5奪三振、2失点だった。日本が4点リードした5回、安打と死球2つで二死満塁のピンチを招き、デービッドの弟ドミニク・フレッチャー(25)に2点適時打を打たれ失点した。打者としては4打数1安打、1四球、2得点を記録した。
3月21日、米フロリダ州マイアミのローンデポ・パークで迎えた準決勝メキシコ戦は、またしてもエンゼルスの同僚を越えなければならない大一番だった。昨シーズン、大谷とともに先発ローテーションを組んだパトリック・サンドバル(26)が日本相手に先発登板した。
サンドバルは4.1回で4被安打、1四球、6奪三振の無失点で日本打線を圧倒した。大谷もサンドバルとの2度の勝負では三振と中飛で退いた。
その後、4-5と1点ビハインドで迎えた9回裏。侍ジャパン最後の攻撃で先頭打者として打席に立った大谷は、メキシコの抑えジオバニー・ガイェゴス(31)の初球を打ち返し、二塁打で追撃の流れを作った。ヘルメットが脱げたまま二塁ベースまで激走し、日本のダッグアウトに向かって両手を上げて咆哮、チームの雰囲気を盛り上げた。
そして大谷の二塁打以後、吉田正尚(29、ボストン・レッドソックス)が四球で出塁し、最後は村上宗隆(23、東京ヤクルトスワローズ)が逆転サヨナラの2点二塁打を放ち、6-5勝利で劇的な決勝進出を決めた。大谷は決定的な二塁打を含め、4打数2安打、1四球、2得点を記録した。
迎えた22日の決勝アメリカ戦、大谷は試合の途中から大忙しだった。指名打者として先発出場したが、大谷は5回以降からブルペンに入り、リリーフ登板するためのアップをしていた。ただ、自身の打席の番が近づくと、急いでダッグアウトに向かっていた。
侍ジャパンは8回、ダルビッシュ有(36、サンディエゴ・パドレス)がソロ本塁打を浴びて3-2と1点差まで追い上げられた。そこで迎えた最終9回、大谷は抑え投手としてマウンドに上がった。
大谷は先導打者ジェフ・マクニール(30、ニューヨーク・メッツ)を四球で出したが、続くムーキー・ベッツ(30、ロサンゼルス・ドジャース)を併殺打で打ち取り、あっという間に2アウトを生み出した。
最後の打者はマイク・トラウト(31)。普段はエンゼルスで一緒にプレーする仲間だ。日米が誇る“野球天才”トラウトと大谷の直接対決は、すべての野球ファンが期待していた瞬間だった。
1点差、優勝が懸かった9回二死の正面対決。大谷は3ボール2ストライクのフルカウントの末、最後はスライダーでトラウトを空振り三振に仕留め、侍ジャパンの優勝を決めた。
(記事提供=OSEN)
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