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エリート野球が崩壊すれば、韓国野球全体が崩壊する。今回のWBC脱落も軌を一にしている。
私は中学2年生から野球を始めた。その後、大学を経て練習生としてプロに入門したが、結果的にユニホームまで着ることができた。
私は元々クラブチームで野球をしていて、そこからエリート野球をするようになったタイプだが、実際のところ非常に珍しい成功ケースだ。ただ、振り返ってみると私も山場が多かった。
そもそも、野球を遅くに始めたことが大きなハンディキャップだった。プロの敷居を超えるまで、その過程が大変だった。他人が幼い頃に学んだことを、私は学べなかったからだ。
基礎技術が弱いので、次の段階に上がれば上がるほどそれが私の足を引っ張った。表面的に野球を学んだとて、中身を埋めることは容易ではなかった。
先に自分の話を出したのは理由がある。韓国には幼い頃の私のように、壁にぶつかるユース選手が多く見受けられるからだ。
現在、韓国野球はエリート野球が弱体化し、リトルやジュニア、クラブ野球が勢いを見せている。私自身、クラブチームの野球が増えることには賛成である。
問題は、エリート野球とクラブ野球が同時に成長できないことだ。両方がともに歩まなければならないのに、クラブ野球が増えるとエリート野球は消えつつある。
韓国は野球先進国のアメリカのように、2時間練習だけで成績を出す仕組みが整っていない。短時間で良い効率を生み出すシステムができていないのだ。そのため、小学校や中学で趣味レベルでクラブ野球をすれば、良い選手が出てくることは難しい。
野球は高校から本格的に行うことになるが、与えられた“3年”という時間は短すぎる。運動時間が少ない状況では、プロに進む選手も出てこない。
野球は反復練習が重要だ。体に技術とディテールを染み込ませる時間が必要だ。
私はプロ選手になるためには“10年”が必要だという持論を持っている。イ・スンヨプであれイ・ジョンフであれ、10年以下のエリートトレーニングではまともなプロ選手は出てこない。
現役の高校監督に会うと、「教えることは多いのに、あまり習わずに来る」と訴える。プロ選手になるためのレベルまで、高校の3年間では消化できる時間が足りないという嘆きだ。
現在、韓国では小学校のエリート野球部が減り、クラブ野球が増えている状況だ。かといって、クラブ野球を減らしてエリート野球を増やすわけにはいかない。すでになくなった野球部を新しく作ることも難しい。
それよりは、残っているエリート野球部から維持して活かすことが急務だ。各単位の野球協会と連盟が最も力を入れなければならない部分である。幼少年エリート野球の消滅は、すなわち韓国野球のルーツが失われることと同じだ。
ある人は「リトル野球をエリート式にすれば良いのではないか」と反問するが、それも容易ではない。
クラブ野球は選手と親の意見に合わせなければならない。良い言葉を言って、モチベーションを上げなければならない。楽しさも付与させる。そうしてこそ、クラブ野球をしに選手たちが集まってくる。
しかし、エリート野球ではただ良いことを言うより、正しいことを伝える方がより重要だ。基礎技術を強化するためには苦言も厭わない。メンタルも強く鍛える。
今回のWBCでの“光速離脱”を見ながら、ユニホームを着たからと言ってプロ選手ではなく、代表選手でもないことをファンも知ることになった。
プロ選手はユニホームを着た分の代価を払わなければならない。代表選手も、太極マーク(韓国国旗)を胸につけて戦う重圧感を乗り越えなければならない。そうしてこそ、本当のエリート選手になれる。
韓国野球が復活するためには、長期的に小中校から大学まで、エリート野球がその中心を握らなければならない。クラブ野球はその隣で派生して、ともに成長すれば良い。
重心が揺れてしまえば、量的には増えても全体の質が下落するものだ。まずはエリート野球を生かすことに集中してはいかがだろうか。
それが、将来いつかのWBCでの善戦ともつながるのではないだろうか。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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