日本国内のメディアは大谷の強化試合出場を控え、「大谷が1974日ぶりに日本国内で試合に出場する」と大騒ぎした。2017年シーズンまで北海道日本ハムファイターズでプレーした大谷は、翌年から米メジャーリーグのエンゼルスに進出した。
大谷は試合前のフリー打撃から関心を集めた。球場を訪れた観客は、大谷のスイングシーンをスマートフォンで撮影するのに忙しかった。柵越えの打球が出ると、感嘆の歓声が場内に大きく響き渡った。
大谷はバッターボックスに5回入り、計24スイングで6本の柵越えを記録した。右外野席上段の3階に落ちる大型本塁打の打球には、今まで以上に歓声が大きく上がった。ただ、これは後の伏線でもあった。
バッティング練習を終えた大谷はチームメイトとロッカールームに入ると、試合開始20分前に一人でグラウンドに登場した。日本のファンは大谷の名前を連呼し、歓喜に沸いた。
大谷は軽くウォーミングアップをしていた際、突然三塁側の観客席に近づいた。するとファンがフェンスの方に駆け寄り、大谷は彼らにサインをし始めた。
試合直前にサインをするのはメジャーでも異例なことだ。強化試合だからこそ可能なこととも言えるが、大谷のファンサービスの人柄もうかがわせた場面だった。
ファンにサインをした大谷は一人でウォーミングアップを始めた。彼だけの試合直前の“ルーティン”に見えた。三塁ファウルラインから外野中央までランニングをし、手足の運動をするなど、自分だけのウォーミングアップに徹した。侍ジャパンのチームメイトは誰も出てきておらず、広い外野に大谷一人だけがアップをしていた。
観客はグラウンド上の大谷ただ一人に集中することができた。しかも、ドーム外野の大型電光掲示板では、カメラが大谷のアップ風景やサインの様子、ランニングなど、大谷の動きに追随し続けていた。
強化試合での大谷は、「野球天才」や「怪力」という表現も足りなかった。
6日の阪神戦では1打席目こそ空振り三振で退いたが、2打席目では片膝をつく崩れたフォームにもかかわらず、中央フェンスを越える3ラン本塁打を放った。3打席目でも同じく3ラン本塁打を放った。3打数2安打2本塁打6打点。圧巻のワンマンショーの後に交代となった。
7日のオリックス戦でも大谷は活躍した。1打席目は安打、2打席目は四球で出塁し、以後交代となった。
強化試合の2試合で、大谷は4打数3安打(打率0.750)、2本塁打、1四球、1三振、出塁率0.800、長打率2.250、OPS(出塁率+長打率)3.050の怪力を発揮した。ただ、本人は初本塁打を放った後、「まだ時差ぼけで体調が100%ではない」とも話していた。
大谷は阪神戦後のヒーローインタビューで「まだまだ声援が足りないので、もっともっと大きな声援をよろしくお願いします」と煽った。これにファンたちは大きな歓声で応えた。
京セラドーム大阪を訪れた観客数は、6日の阪神戦が3万3460人、7日のオリックス戦が3万3357人。両試合とも完売だった。
2日間で6万6817人が訪れ、大谷の、大谷による、大谷のための“野球コンサート”を楽しんだ。
(記事提供=OSEN)