試行錯誤も存在した。時間が経っても後方からのビルドアップに改善は見られず、むしろ弱点が浮き彫りになった。それはW杯本大会を控えて行われた国際Aマッチでも変わらなかった。
特に、昨年3月の国際親善試合、そして今年7月のE-1サッカー選手権では連続で日本代表に0-3の惨敗を喫し、ピンチも迎えた。韓国サッカー協会(KFA)のチョン・モンギュ会長が謝罪文を発表したほどだった。
それでも、ベント監督は粘り強くビルドアップサッカーにこだわり続けてきた。
多くの専門家は、「ビルドアップサッカーは韓国が戦力で上回るアジアでは通用するかもしれないが、W杯のような世界の舞台では通用しないだろう」と見込んでいた。
しかし、いざ本大会を見てみると、韓国のパフォーマンスは期待以上だった。
ベント監督体制で中核を担ってきたFWソン・フンミン(30、トッテナム)、MFファン・インボム(26、オリンピアコス)、DFキム・ミンジェ(26、ナポリ)はもちろん、MFイ・ガンイン(21、マジョルカ)やFWチョ・ギュソン(24、全北現代モータース)といった若手もチームカラーに溶け込んで見せた。
ウルグアイとのグループ初戦からまったく引かなかった。ベント・コリアが約4年間で追求してきたサッカーをそのまま展開した。ガーナに敗れた第2節はもちろん、FIFAランキング9位のポルトガルに劇的な勝利を収めた最終節でも、韓国のサッカーは好評を得た。
また、1-4で大敗を喫したものの、世界最強のブラジルに対抗した決勝トーナメントでも韓国のビルドアップは良かった。韓国を12年ぶりにベスト16に導いたベント監督は、歴代最長の在任期間となる約4年4カ月を残して指揮官の座を退くことになった。
ベント監督の功績を評価するうえでは、現代サッカーのトレンドに合った方式を取り入れ、選手から継続的に呼応を得ながら、W杯ベスト16という結果を出したことを認めなければならない。
ベント・コリアはこの4年間で常に同じ方向を走り続けてきた。内部的な信頼関係がどの代表よりも強く結ばれていた。今大会の韓国を象徴する言葉「大切なのは折れない気持ち」も同じ脈絡だ。
結果だけで評価される時代は過ぎた。それまでの過程も重要というわけだ。
一つの例として、ベント監督体制の代表チームは体系的な練習方式一つひとつを選手に理解させ、説得する段階からチームを構築した。これ以上は“注入式”の指導方式が通用しないという意味だ。
世代と時代が変わり、個々人の主張と個性がより明確になった。それはつまり、小さなことでも選手たちが納得できる理由が存在しなければならないという意味になる。
韓国の次期監督としてどんな人物、どんなコーチ陣が来るかはわからないが、ベント・コリアが残した“資産”を絶対に無視してはならない。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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