「2012年ロンドン五輪の銅メダル以上」を目標に掲げ、自信を持って去る7月17日に日本へ出発した男子サッカーのU-24韓国代表。
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ただ、最終的には東京五輪をベスト8で終え、8月2日に帰国した。韓国サッカーの挑戦はわずか2週間余りで幕を閉じた。
グループステージ突破という結果は決して悪くない。ただ、決勝トーナメント準々決勝でU-24メキシコ代表に喫した「3-6」という大敗の印象があまりに強すぎた。多くのメディアが“惨事”という表現を用いたことも理解できる。
ひとたび失敗を犯してしまえば、一から十までのすべてを原因として指摘される。そのなかに監督の責任があることは言うまでもない。東京五輪では、全面的にキム・ハクボム監督の責任が大きかった。
キム監督は、東京五輪を準備する過程でさまざまな雑音を引き起こした。DFキム・ミンジェ(24、北京国安)やFWソン・フンミン(29、トッテナム)などオーバーエイジ枠の選出問題から、国内Kリーグ所属選手の無理な招集まで、批判されてもおかしくない素材を多く量産した。
それだけに、メキシコ戦の大敗は結果的にキム監督の過ちに帰するしかない。実際、キム監督自身も「すべては私の責任だ。監督が上手くできず、こういうことが起きてしまった」と頭を下げていた。
ただ、すべての矢を一人のリーダーに向けることが適切かどうかとなると、疑問が残る。敗退の要因はほかにもあるのではないか。
この3年間、韓国サッカーは世代別代表で着実に結果を残してきた。2018年ジャカルタ・アジア大会での金メダルをはじめ、2019年U-20W杯準優勝、2020年U-23アジア選手権優勝など、あらゆる国際大会で存在感を表していた。
そして、これらすべては監督の指導力と韓国サッカー協会(KFA)の協業が生み出した結果だった。
U-24代表(前U-23代表)のキム監督とU-20代表のチョン・ジョンヨン元監督(現ソウルイーランド監督)は、自身のリーダーシップとノウハウを十分に発揮。KFAでは、昨年まで副会長と技術委員長を務めたキム・パンゴン現戦力強化委員長を中心に、指揮官を全面的にサポートしてきた。
キム・パンゴン委員長は大会のたびに現地までともにし、選手運営や相手の分析にも同行した。それだけでなく、対戦相手の戦術や所属選手を分析する技術研究グループ(TSG)も構成し、世代別の各大会で力を貸した。
このシステムは大きな影響をもたらした。いくら経験が豊富な監督でも、期待とプレッシャーがかかる大会本番では視野が狭くなり、誤った判断を下してしまう場合がある。監督は全知全能の魔法使いではない。
実際、キム監督はU-23アジア選手権当時、初戦でMFウォン・ドゥジェ(23、蔚山現代)を起用しなかったが、キム・パンゴン委員長やTSGの助言を受けてウォン・ドゥジェを重用した事例もある。
その後、ウォン・ドゥジェはU-23アジア選手権で韓国を優勝に導く活躍を披露し、大会MVPにも輝いた。集団知性の討論と、キム監督の柔軟な受け入れがもたらした結果だった。
それだけでなく、監督やコーチングスタッフは試合準備や選手管理にほとんどの時間を割いている。大会途中にデータのない相手を分析する余力はない。A代表レベルの強豪国ならともかく、世代別代表では大半の国がベールに包まれている。既存のスタッフ以外にサポートが求められるのにはこうした背景がある。
チョン監督はU-20W杯で準優勝後、「TSGの方々がたくさんサポートしてくれた。むしろ私が彼らに“早く分析してほしい”と要請し、苦しめてしまった。ともに資料を見ることで助けを得ることが確実にあった。私が望むこと、納得できることがあれば、疎通して受け入れれば良い。そうでなければまた話せば良い」と語っていた。
このように、世代別代表の成功にはキム・パンゴン委員長のサポートやTSGの協業があった。
しかし、キム・パンゴン委員長が構築したこれらのシステムは東京五輪から消え失せてしまった。
国家代表監督選任委員長としてキム監督を選任し、これまで連携を深めてきたはずのキム・パンゴン委員長は、今回日本に向かわず。代わりに、今年から大会技術本部を統括することになったファンボ・ガン本部長が団長として同行した。
過去に大分トリニータで監督を務めたこともあり、“日本通”ということでファンボ・ガン本部長が同行したようだが、U-24韓国代表の事情に詳しい関係者によると、団長の役割上、パフォーマンスに影響を及ぼすような大きな役割はしなかったという。
チームを支えたシステムが姿を消した状況で、一人重荷を背負わざるを得なかったキム監督は、メキシコの戦力も十分に把握できないまま真っ向勝負を挑んで完敗することになった。
元々、オリンピックはADカードが少ないために多くのスタッフを同伴させることが難しい。東京五輪は特に、新型コロナウイルス感染症の影響もあって制限的だった。TSGが合流できなかったことも理解できる。
とはいえ、この3年間で成功を生み続けてきたシステムが、東京五輪ではいかなる形であれ初めから機能しなかったことは残念だ。
むしろ、キム監督と相性の良いキム・パンゴン委員長が大会に同行していれば、これまでと同様にシナジー効果を発揮できていたかもしれない。
KFAの事情に詳しい関係者は、「協会は今大会でそのシステムを最初から放棄したかのように見えた。ADカードが不足していたのであれば、団長ではなく実質的に外部からサポートできそうな人を送ることが正しい」とし、「すべての責任をキム監督に負わせようとしているのではないか」と指摘した。
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