フィリップ・ブラン監督が昨夏のパリ五輪限りで男子バレー日本代表を退いて早くも1年が過ぎた。挑戦の場を韓国に移した名将は初年度から王座に立ち、今年もさらなる飛躍を遂げようとしている。
ブラン監督は昨年8月より韓国プロバレーVリーグ男子部の現代キャピタル・スカイウォーカーズを率い、2024-2025シーズンにチーム史上初の“三冠”を達成した。
リーグ開幕前のKOVOカップを制し、Vリーグでは一時16連勝など圧倒的な強さでレギュラーラウンドを1位フィニッシュ。チャンピオン決定戦では前年度王者の大韓航空ジャンボスを破った。レギュラーラウンド、チャンピオン決定戦をともに制する“統合優勝”は、現代キャピタルとして19年ぶりの快挙だった。
シーズン終了後にはイタリアチームの監督就任説も取りざたされたが、自身の口で噂を一蹴。今年4月に行われたVリーグ・アウォーズ(年間表彰)で監督賞を受賞した際、壇上で「新シーズンも現代キャピタルの監督として戻ってくる」と発言して注目を集めた。
そんなブラン監督は最近、現代キャピタルの本拠地キャッスル・オブ・スカイウォーカーズで本紙『スポーツソウル』のインタビューに応じ、「プレッシャーはむしろ良いプレーにつながる感情だと思っている。昨季に優勝したからといって、今季もまた優勝できるわけではない。チャレンジャーとして改めて目標を立て直さなければならない」と強調。
「(優勝は)何をしなくても手に入るものではない。今季は昨季よりもさらに熾烈な争いになるはずだ。競争に身を置く以上、常に1位を目指して全力を尽くす必要がある」と、2年目のシーズンを戦う意気込みを語った。
9月からスタートする世界選手権には韓国も出場する。現代キャピタルも3選手が代表に招集されており、同時期に行われるKOVOカップでの戦力ダウンが懸念されるが、指揮官は「代表招集のため選手層に空きはあるが、若手が非常に情熱的で闘志ある姿を見せている」と意欲を示す。
「レギュラーラウンド1位に与えられる利点は大きい。2位や3位は試合数が増えるので、必ず1位を守りたい」と、ブラン監督は“連覇”への野心も明かす。韓国Vリーグでは上位3チームがポストシーズンに進出し、1位はチャンピオン決定戦にストレートインできるが、2~3位は同決定戦出場をかけてプレーオフを戦わなければならない。シーズン終盤の試合数増加に伴う選手の負担も、指揮官は現時点から考慮している。
チームの選手構成にも変化があった。204cmの長身を誇るアジア枠の中国人選手シンフェン(24)が退団し、ベテランアタッカーのチョン・グァンイン(33)もOK貯蓄銀行・ウトメンへ移籍。代わりに左利きオポジットのシン・ホジン(24)、モンゴル出身ミドルブロッカーのバヤルサイハン(27)らが加入した。ホ・スボン(27)とレオナルド・レイバ(35)の看板アタッカー2枚に、新戦力がどうフィットできるかが課題となる。
「我々のシステムはリーグで十分に競争力を示した。その力を維持するためのトレードだった。シン・ホジンはより専門的にオポジットの役割を果たせる選手だと考えた。バヤルサイハンはミドルブロッカー以外にレシーブ型オポジットも可能であり、マルチな能力を持っている。2人ともチームにポジティブなエネルギーを与えており、よりダイナミックなチームになるだろう」
ブラン監督は若手育成にも注力を惜しまない。オフ期間にはフィリピンや台湾の大会に出向いて若手を出場させ、7月には国内で行われた「韓国実業バレーボール連盟&プロバレーボール・フューチャーズチャンピオンシップ」で無敗優勝を果たした。現代キャピタルは昨季以上に選手層を厚くし、チーム内の競争力も高まったと評価されている。「若い選手たちは大会や練習を通じて大きな成長を見せている。試合に出場できない選手は試合勘に劣ることもあるが、今は強いモチベーションを持っている。ベストメンバーと控えメンバーの差が縮まり、チーム全体のレベルが底上げされつつある。使える戦力が増えたことは大きなプラスだ」と、監督自身も手ごたえを感じているようだ。
韓国プロバレーは9月のKOVOカップを経て、10月よりVリーグが開幕する。2年連続の“三冠達成”を目指すブラン監督のチャレンジを引き続き注視していきたい。
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