ソウル繁華街の1カ所に、悲痛な表情の市民が続々と足を運んでいる。
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7月1日、ソウル市庁駅近くで死傷者13人の交通事故が起きた。
ソウル市庁近くのホテルから突然飛び出し、幹線道路を逆走行し始めた車は、歩道に突進して歩行者にも衝突した事故。30代男性4人、40代男性1人、50代男性4人の計9人が亡くなり、4人が負傷(重傷1人、軽傷3人)している。
警察は車両を運転していた男性(68)を現場で逮捕するも、痛みを訴えたため同乗していた60代女性とともに病院に運ばれた。飲酒運転の疑いはなく、薬物や居眠り運転も現時点では確認されていない。
痛ましい事件から2日後の3日、事故現場には市民の行列が続いていた。数十本の菊の花や焼酎、ビタミン飲料、手紙がいたるところに積まれている。
市民たちは事故で破損したフェンスの周辺に集まって悲しみを隠せずにいた。じめじめした天気、じめじめした気温にもかかわらず、惨憺たる表情で長く滞在する者も少なくなかった。ある市民は「話にならない。どうしてこんなことが起きるのか。むなしい」と吐露している。
数多くのお供え物のなかでも、ある一枚の手紙が目を引いた。
手紙は「私だよ」と切り出され、「とても痛かったでしょう。あまりにも遅くなってごめんね」「現世ではお疲れ様でした。体に気をつけて、元気に過ごして。会いたい」という内容が書かれていた。
ある市民は手紙を読み、内容に目頭を赤くしていた。これらの手紙のほとんどが、故人の職場関係者、友人、市民などが作成したと思われる。
また、現場の隅で静かに祈りを捧げていた市民は、「用事があって通ったが、実際に事故現場を見ると、どうしても離れられず、故人の冥福を祈っている」として、「なぜソウルの真ん中で、このような事故が起きるのか、とても悲痛だ」と深くため息をついた。
ほかにも数人の市民は事故車両に対して疑問を提起したりもした。職場が近く、毎日訪れているという市民は、「ここは逆走行するような場所ではないのに、加速して歩道に突進したということが理解できない」と当惑した。
なお、事故車両を運転していた68歳の男性は、今回の死亡事故について「車が急発進した」と主張しており、警察は不注意などすべての可能性を念頭に置いて調査中だ。事故車両のドライブレコーダーの音声記録には、運転していた男性と同乗していた妻の叫び声だけが含まれていたという。
警察は主要参考人の調査のほか、物証も確保し、原因の究明に拍車をかけている。国立科学捜査研究院は、事故車両であるヒュンダイ製のジェネシス・G80の車載事故記録装置(EDR:イベントデータレコーダー)などの分析に入っている。
市民が悲しみに暮れるなか、犠牲者を嘲弄するような恐ろしい文も登場し、公憤を買っている。犠牲者に対して「トマトになってしまった…」 など、人間の心を持っているとは到底思えない内容だ。
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