韓国ではユン・ソギョル(尹錫悦)新政権が発足し、新たに推進する金融市場政策に関心が集まっている。
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5月10日、ユン・ソギョル大統領が5年任期の第20代大統領に公式就任。先立って3日に引継ぎ委員会で発表された「ユン・ソギョル政府110大国政課題」内の、金融市場に関する政策が注目を集めている。
株式市場関連政策としては、株式・金融投資商品など課税制度合理化と空売り制度改善策を発表した。超高額の株式保有者を除いた個人投資家を対象に、韓国国内の上場株式の譲渡所得税を廃止する。ただ、来年(2023年)導入予定だった金融投資所得税は、2年猶予されるものと予想される。
金融投資所得税法は、株式とファンド、債券など、金融投資商品の合算純利益が5000万ウォン(約500万円)を超えれば、大株主の可否とは関係なく20~25%の譲渡税を賦課するというもの。また、ユン政権は個人投資家が空売りを活用できるよう、空売り担保比率を現在の140%から引き下げる方針だ。
ほかにも少数株主を保護する案も発表。推進する資本市場関連小額株主保護方案としては、「物的分割関連株主の保護」「インサイダー取引規制強化」「透明性・公正性の改善政策」など。
物的分割関連株主の保護では、企業が新事業を物的分割し、別の子会社として上場する場合、既存の親会社の小数株主の権利が侵害されないよう整備する。また、物的分割そのものを防ぐことができない場合、小数株主に株式買収請求権や新株引受権などを付与する案も取り上げられている。
またインサイダー取引規制強化は、経営陣など内部の者が持分を売り渡す際に処分計画を事前公示するようにし、株式譲受の度に伴う経営権変更の際、小数株主保護装置を用意する。続いて外部監査の力量強化を通じて会計の透明性向上を推進する。さらに、不公正取引行為に関する制裁の実効性を高め、証券犯罪への対応を強化するそうだ。
ユン政権の貸付関連政策では、生涯初の住宅購入世帯のLTV(Loan to Value)の最大上限を、既存の60~70%から80%に緩和する方案を推進する。現行のLTVは、投機地域・投機過熱地区で40%(生涯初は60%)、調整対象地域で50%(生涯初は70%)が適用されている。生涯初の住宅購入でない場合は、地域と関係なくLTVを70%に一本化。また、多住宅者のLTVを、規制地域0%から30~40%に緩和することにした。
仮想資産分野では、デジタル資産基本法の制定や国内仮想資産発行(ICO)の許容などを主要政策課題として発表。ICOは詐欺性プロジェクトが乱立し、2018年の金融委員会で全面禁止した経緯がある。
ユン政権は詐欺性プロジェクトを防止するため、仮想資産を証券型と非証証型に分け、証券型コインは投資家保護装置が設けられた資本市場法に従って発行するようにする。非證券型コインは国会に係留された法案を議論し、発行・上場・不公正取引防止など規律体系を用意する。
デジタル資産基本法は、代替不可トークン(NFT)を含め、デジタル資産を発行したり上場したりするなど、主要行為に対する規制を通じて消費者を保護し、安全な取引環境を造成することを骨子とする。
このため、国際決済銀行(BIS)、金融安定委員会(FSB)など、規制動向を持続的に把握し、弾力性を確保。さらに新政府は1年間の猶予がある仮想資産投資収益に対する課税案も、投資家保護装置を先に設けて法制化したあと、推進することにした。また、仮想資産被害犯罪に関して、厳格な法執行と被害者支援を約束している。
ユン政権が打ち出した金融市場政策の変化により、金融業界も慌ただしく動く予定だ。しかし、まだ今回の政策に対する期待感と憂慮の視線が共存している状況だ。
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