700億ウォン(約77億円)台の横領疑惑で起訴された元ウリィ銀行職員と共犯者の弟が、二審でも重刑を宣告された。
これを受け、ウリィ銀行の横領金回収に関心が集まっている。数年間にわたって発生した横領事件である上、資産の所在が不透明であること、隠匿の可能性を考えると、銀行側が横領金回収することは容易ではない。
加えて、彼ら兄弟が横領金の一部を海外のペーパーカンパニーの口座に流出させ、危険度の高いデリバティブなどに投資するなど、追加の犯罪も知らされている。そのため、全額回収の可能性はますます不透明になっている。
現時点では、ウリィ銀行の横領金回収率はわずか1.2%に過ぎない。
銀行の生命は信頼だ。ところが顧客が信じて預けたお金を安全に守れず、あまつさえ回収できないとなれば、その信頼はすでに破綻したも同然といえる。
ソウル高裁刑事2部は1月11日、ウリィ銀行から707億ウォン(約78億円)を横領した疑いで起訴された元職員チョン氏(45)に懲役15年、弟(43)に12年を言い渡した。また、共犯のソ氏には懲役1年6カ月、執行猶予3年が言い渡されている。
原審よりも量刑が重いものになったことについて、裁判所は「犯行を認め、捜査機関に自首した点、同種の前歴がない点などを考慮したが、厳重な宣告は避けられない」と判示した。
裁判所はチョン兄弟から1人当り332億700万ウォン(約36億6000万円)ずつを追徴するが、この内、50億4000万ウォン(約5億5500万円)は共同で追徴せよと命じた。横領した金を受け取ったソ氏には、約14億ウォン(約1億5400万円)の追徴金が課されている。
チョン氏はウリィ銀行で働いていた2012年3月から2022年2月の期間、銀行資金から総額707億ウォンを横領し、株価指数オプション取引などに使った容疑で起訴された。この過程で、金を引き出した根拠を示す文書も偽造したり、弟と共謀して横領金の一部を海外ペーパーカンパニーの口座に横領したたりした疑いもある。
この事件に関して、一部では「数年にわたる横領のため、財産が残っていなかったり、隠匿財産を発見したりすることは難しそうだ」と観測されている。元職員の巨額横領が発覚したウリィ銀行は現在、“横領金回収”という難関に直面した状況だ。
横領金の回収に対してウリィ銀行は、「裁判結果、判決文などを検討し、被害額還収のための適切な措置を取る」として、「刑事裁判を通じて還収し、現在は刑事裁判進行中だ。追徴宣告が確定されれば、これを通じて回収予定」と明らかにした。
ただ、ウリィ銀行は現時点での回収率は良くないが、現在の刑事裁判を通じて進行しているだけに、むやみに回収権に介入することはできないと立場で一線を引いている。要するに、ウリィ銀行は裁判結果を待たなければならないという意味だ。
法的には妥当かと思われるが、社会通念上での非難を避けられない。
しかも、ウリィ銀行は2017年から2023年まで、2018年の一度を除いて毎年横領事件が起きている。昨年は地方支店の職員が約9000万ウォン(約9900万円)を横領、ソウルのある支店職員が3月から8月の間に顧客の公共料金約5200万ウォン(約570万円)を横領していたことが発覚。また、同年12月にはフィリピン法人でも20億ウォン(約2億2000万円)の資金流出事故が発生した。
このように、ウリィ銀行では複数の事件が相次いで発生している。ウリィ銀行としては、内部統制システムをもとに、先んじて不正を発見して追加の被害を防ぎ、横領額は回収したという立場だ。
行政機関の金融監督院は、ウリィ銀行の横領事件に対して、「当人の財産調査、仮差押えなどの債権保全措置は、銀行側で先に行うことになる」として、「それ以降、事件が検察にわたれば、主に検察内部の犯罪収益還収部で進行される」と説明した。
回収額に関しては、「700億ウォン横領件は、あまりにも長期間に行われた件だ」とし、「普通、横領事件が起き、短期間で摘発されれば回収率が少し高くなる傾向があるが、長くなると探すことも難しい部分がある」と明らかにした。
続いて、「ウリィ銀行内に設置された与信管理部を通じて持続的にモニタリングする。最近、横領事件が少し続いているため、金融当局もまた、ウリィ銀行側に持続して注意し、最大限回収できるよう要請している」と強調した。
なお、金融監督院に関しても、ずさんな監視網と軽い処罰で議論が起きている。
金融監督院は、内部統制に一部責任があるウリィ銀行役員に対して、注意・けん責で終わらせたことがある。12日に金融監督院が公開したウリィ銀行の総合検査および随時検査制裁内容によると、700億ウォン規模の横領事件、金融取引の実名確認義務違反、金融投資商品の不完全販売などに関して、機関警告と8億7800万ウォン(約9700万円)を科した。
金融監督院も、経済の根幹を揺るがす事件、国民の公憤を買う事件に対しては、より厳正な対処が必要と見られる。
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