『ボストン1947』来日舞台挨拶にカン・ジェギュ監督登壇!主人公ご令孫との対面に感極まった理由

2024年08月02日 映画 #韓国映画

ベルリンで止まった時間を動かすため、祖国への想いを胸に命がけのレースに挑む真実に基づく衝撃と感動を描いた映画『ボストン1947』。

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韓国では昨年9月に公開され、日本でも今夏の公開を控えた今作の舞台挨拶付き特別試写会が、8月1日に国立オリンピック記念青少年総合センターで開催された。

映画上映後に行われた舞台挨拶では、今作を手掛けたカン・ジェギュ監督と、主人公のソン・ギジョンさんのご令孫である孫銀卿(そん・うんきょん)さんが登壇し、映画や主人公ソン・ギジョンについて語り合った。

カン監督「グッと涙がこみ上げて、泣きそうに…」

舞台挨拶の冒頭、カン監督は「この映画は去年、韓国で公開されましたが、日本で公開できるだろうかと心配していました。ですから今日、観客の皆さまとお会いできたことを嬉しく思いますし、ありがたいなと思っております」と、試写会を訪れた観客に感慨深い様子で挨拶を伝えた。

また、“1947年”という時代の映画を制作しようと考えた理由については、「私は以前からマラソン映画を作りたいとずっと思っていました。それで4年ほど前に、愛すべき後輩が、まるで贈り物ともいうべき、このシナリオを持ってきてくれました。読んでみたら1974年に開かれたボストンマラソン大会の話でした。実は読むまでこの奇跡のようなサクセストーリーを知らなかったんです。韓国では第二次世界大戦が終わり、国が解放されたあとに朝鮮戦争が勃発してしまうわけですが、その前の時期に起きた奇跡のようなストーリーをぜひとも映画化したいと思いました」と明かした。

カン・ジェギュ監督
カン・ジェギュ監督

続けて、本作で描かれたソン・ギジョンさんのご令孫である孫銀卿さんは、「おじいちゃんが亡くなったのが2002年。その頃、私は20代でした。私にとってのソン・ギジョンの記憶は、どこまでもおじいちゃんでしたが、亡くなった後は歴史上の人物となりました。そのために本を読んだりして学んだりもしましたが、今回あらためて映画という形でソン・ギジョンを客観的に見る機会となりました」としみじみと語った。

すると、その話を聞いたカン監督が、「今回、ソン・ギジョン先生のお孫さんにこうやってお会いすることができて、まるで私自身がソン・ギジョン先生にお会いできたような気持ちになりました」とコメント。

「昨日は(都立西高等学校の)高校生たちと、この映画を通してお話をする機会があったのですが、その時に、自分でも分からないのですが、グッと涙がこみ上げてきて、泣きそうになってしまったのです。どうしてかなとあらためて考えてみたのですが、きっと実際にお孫さんとお会いすることで、先生を身近に感じられたのかなと思いました」とかみ締めるように語った。

イム・シワンは「マラソンランナーに適した人」

自身の祖父にあたるソン・ギジョンさんについて、「映画の中で、ちょっとだけおじいちゃんのシャツがオシャレだなと感じられたりはしなかったですか?実は本人はオシャレが好きなんです」と観客に明かした孫銀卿さん。

「私が生まれた後も頻繁に日本と韓国を行き来していて、日本では私たちの家に泊まっていたんですが、その時は必ず新宿の伊勢丹に買い物に行っていました。そして私が小学生になると、私にお洋服を買ってくれたんです。映画にオシャレなシャツが出てきたのを見て、そのことを思い出しました」と、生前の思い出を振り返った。

孫銀卿さん
孫銀卿さん

「実際に資料を見た時から、先生は外見に気を使われている方だなと思いました」というカン監督も、「同じユニホームでも、先生はカッコ良く着こなしていましたし、ヘアスタイルもカッコよくとまっていました。それは選手時代だけでなく、指導者になったあとも、スポーツ界のファッショニスタと言われるほどに、とてもオシャレな方だったと聞いています。ですから衣装や靴などをわたしなりに気を付けました」と伝えた。

本作でソン・ギジョンさん役を演じたのは、韓国の国民的スターである俳優ハ・ジョンウ。「私が思うに、実際の先生の性格や外見に一番似ているのが、ハ・ジョンウさんじゃないかなと思いました。今回はハ・ジョンウさん本人の姿を感じさせないくらい、ソン・ギジョンそのものになりきってくださった」とカン監督は絶賛する。

そして、ソ・ユンボク選手を演じた俳優イム・シワンについては、「以前から演技が上手い方だなと思っていたので、いつか機会があったら仕事をしてみたいと思っていました。劇中のソ・ユンボクは背が低くて小柄な人ではありましたが、その身長のわりに足が長く、腰回りは小さい。その意味ではマラソンランナーに適した人でした。この映画をリアルに感じさせるためには、ソ・ユンボクに近い俳優を探す必要がありました。そしてその役柄を演じるのにイム・シワン以上の人はいないだろうと思いました」とキャスティングの経緯を告白。

「彼は撮影の準備の段階から終わりまで、マラソンランナーとしての訓練を続け、体型や姿勢を維持するよう努力してくれました。体脂肪率を6%に絞るのは本当に難しいことなんですが、渾身の力で努力を続けてくれました」と、感謝の思いを語っていた。

「若者たちの姿を見てほしい」

最後に、『ボストン1947』を鑑賞した観客、そしてこれから映画を鑑賞する人に向けて、孫銀卿さんは「私は映画を観ていくつかのシーンで泣きました。私の友人が“涙は心の汗だ”と言ってくれたことがあって。映画を観て疲れたというか、いい汗をかいたという感じになりました。ぜひまた1回でも2回でも観ていただいて、運動した気分になってくれたらいいなと思っています。実は祖父が亡くなったのが2002年なんですが、2001年から、おじいちゃんの気持ちを感じたくて、自分でもマラソンをはじめたんです。もちろん、おじいちゃんと同じ経験はできないんですが、“走る”という経験はできるなと思ったんです」とメッセージを伝えた。

カン監督も「現代を生きる若者たちは、生きることに大変さを感じていたり、悩みを抱えていたりしていると思います。それは日本のみならず、韓国の若者も同様です。ただ、今の若者たちも大変だと思いますが、ぜひとも本作で描かれる時代を生きた若者たちの姿を見てほしいなと思っています。1947年という時代は本当に厳しい世の中だった。その中でも若者たちは夢や希望や勇気を失うことなく、自分の夢を追いかけて、お互いを激励し、お互いを犠牲にし、挑戦を続けていました。その姿をぜひ今の若者たちにも見ていただきたいなと思います。そこから何かしら得るものがあるんじゃないかなと思うんです。だから今日足を運んだ方にも、若い人にも見てもらえるよう薦めていただけたら」とし、「皆さんは日々、ものすごく一生懸命にお仕事をしていらっしゃるかと思います。それは親世代もそうだったと思います。一生懸命働いて、お金を使うためには健康でないといけません。健康のために、ぜひともマラソンをしてください」とメッセージを送った。

カン・ジェギュ監督、孫銀卿さん
カン・ジェギュ監督(左)、孫銀卿さん

なお、『ボストン1947』は来る8月30日より、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開。

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