政治にあまり関心がないという女優キム・ヒエが、政治に関連したドラマに3作続けて出演している。
2023年のNetflixオリジナルシリーズ『クイーンメーカー』に続き、今年2月に公開された映画『デッドマン』(原題)、そして去る6月28日に公開されたNetflixオリジナルシリーズ『旋風』だ。
『クイーンメーカー』では政治家の補佐役、『デッドマン』では政界を牛耳る政治コンサルタント役、『旋風』では経済副首相役として出演した。政界の裏方からプレーヤーまで多彩に演じてきたわけだ。
キム・ヒエは、「私は元々、自分の作品を2度も見ません。一度見るのでさえも大変です。ただ、今回は3回見たが、ずっと新しくて面白かった。セリフをあれだけたくさん読んだのに、新しく伝わってきました」と語った。
じっとしていても品位があり、主体性のある女性を演じてきたキム・ヒエに悪役は似合わなかった。
しかし、『旋風』で演じたチョン・スジンは悪役だ。学生運動家出身で政界入りし、財閥の金の前に屈服した政治家という役どころだ。脚本家のパク・ギョンス作家はチョン・スジンについて「堕落した信念」と一喝した。
キム・ヒエは「チョン・スジンも最初は正義感に燃える女子学生でしたが、夫と良い出会いができず、悪い人たちと混ざるようになりました。もしかしたら、チョン・スジンも被害者かもしれません。悪党の容貌より人間に対する憐れみで接近しました。実利もなく苦労ばかりしているという気がしたんです」と話した。
真面目で堅物な人物を演じてきたキム・ヒエは、受動的で陽気な役柄に対する懐かしさが大きくなったという。気楽なセリフを言う状況に対する渇望が生まれたというのだ。
「私は政治に詳しくありません。なぜこんなに私をエリートとして活用するのかはよくわかりません。『旋風』において政治は“食材”であるだけで、人間の没落と堕落した欲望が込められています。私が主体的な感じが強いようです。私は受動的で賢くもありません。地味で現実的な演技も上手ですし。罪悪感もたくさんあります。ハハ」
そんな彼女は、女優としてベテランの域に達しながらも、依然として演技が難しいと訴えた。
特に『旋風』では困難が多かった。なかでも、セリフを覚える過程で苦しみが多かったようだ。
「パク・ギョンス作家の長年のファンでした。今回もスピードが速く、セリフも多かったです。演技でもニュアンスでも、正確なセリフの伝達に気を使いました。少し無理をしたらずっとNGが出て、危うく大事故になるところでした。セリフの一行がすべてかっこよく、貴重でした。無駄に流すことができなかったので、大事にしながら演技をしました」
『旋風』の相手役として俳優ソル・ギョングを強く推薦したのもキム・ヒエだ。キム・ヒエは作品に対するアピールを最大限し、ソル・ギョングはそのアピールを受け入れた。
「考えてみてください。ソル・ギョングでなければパク・ドンホ役に誰が似合いますか?この歳でソル・ギョングのように官能的で素敵な俳優はいません。ほかの俳優は考えたくありません。そして、本当に一生懸命演技したことがうかがえます。本当にありがとうございます。私たちの世代で最も魅力的な俳優です。相手役として出会えたのは幸運だったし、運命的に出会えたと思います」
最近ではキム・ヒエの“腹筋”が話題を集めた。60歳目前の年齢にもかかわらず、くっきりと割れた腹筋で人々の視線を集めた。“地味な演技”が懐かしいと言ったが、徹底した自己管理の姿を垣間見ることができる。
「朝、目が覚めたら自転車に1時間乗ってストレッチを30分します。これは毎日必ずしています。ピラティスは時間があるたびにしていますし、パーソナルトレーニングも受けています。済州(チェジュ)に行ったときは、だいたい団地にあるジムで運動をします。あとはゴルフもします。じっと横になっているタイプではありません」
キム・ヒエは長年、数え切れないほど多くの作品に出演しながら、“堅固で素敵なキム・ヒエ”という自分だけのブランドを作り出した。新しい挑戦の前で躊躇せず、誠実に取り組んできた結果だ。
「私が今まで来られたのは、止まらなかったということです。どんなハードルがあっても逃げずに乗り越え、現在進行形で働くことができました。さまざまな状況が怖くて逃げたら、次の機会がないと思います。容易ではないキャラクターが来たときも厭わず挑戦したら、ずっと次の仕事をすることになり、『旋風』まで続きました。私も大変だし、撮影するときにつらいこともありますが、それをしたので風が涼しく吹くとき、友達と運動するときがもっと幸せに感じます」
◇キム・ヒエ プロフィール
1967年4月23日生まれ。高校在学中にハイティーン向けのファッションモデルとして芸能活動を開始。2011年、俳優チャン・ヒョクとともに主演を務めたドラマ『マイダス』が人気を博し、2014年には映画『優しい嘘』とドラマ『密会』で俳優ユ・アインの相手役を連続で務めた。2020年放送のドラマ『夫婦の世界』で韓国ケーブルテレビ史上最高視聴率となる28.4%を記録したことで、第56回百想芸術大賞のTV部門女性最優秀演技賞を受賞。夫は有名ベンチャー企業家のイ・チャンジンで、1989年ソウル大学在学中に韓国語ワード・ソフト「HWP」を開発し、大富豪になったことから“韓国のビル・ゲイツ”と称される。
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