漫画オタクから若き巨匠へ。『パラサイト』ポン・ジュノ監督の52年人生を振り返る

2020年02月12日 話題 #韓国映画

以前放送されたドキュメンタリー番組『監督 ポン・ジュノ』(MBC)で、ポン・ジュノ監督は「結婚した1995年から『殺人の追憶』が公開(2003年)されるまで、すごく大変だった。大学の同期がお米を持ってきてくれるほどだった」と語った。

「正直、ギリギリだった。おそらく1998年頃、妻(チョン・ソニョン脚本家)と話し合った。『1年だけ僕に時間をくれ』と話したら、妻が『1年分の生活費はあるから、なんとかなる』と言ってくれた。だから『食べられなくても、とりあえずGOだ』という気持ちで映画に全てを賭けた」

大失敗に終わったデビュー作『ほえる犬は噛まない』の制作会社が、ポン・ジュノ監督に再び手を差し伸べたこともあって、2作目にして大ヒットした『殺人の追憶』が世に送り出された。『殺人の追憶』は、小道具一つまでも抜け目のないクオリティの高さで観客に強い印象を残し、ポン・ジュノ監督特有の几帳面さが世間に知れ渡った作品でもある。

巨匠たちと同じ舞台に立った、“成功したオタク”

映画監督の夢を抱いた頃から、「最も個人的なものが最もクリエイティブなものだ」という巨匠マーティン・スコセッシの言葉を胸に刻んだというポン・ジュノ監督。

アカデミー賞監督賞の受賞スピーチでは、一緒にノミネートされたマーティン・スコセッシ監督と、日頃から「兄貴」と親しみを込めて呼ぶほど愛してやまないクエンティン・タランティーノ監督への感謝を述べ、会場を盛り上げた。

1月25日に開催された「第72回全米監督協会賞」でも、クエンティン監督が壇上に上がると興奮した表情で写真を撮るポン・ジュノ監督の姿がスクリーンに映し出されて話題に。韓国のネット民からは「これぞ成功したオタク」との声が寄せられた。

「第72回全米監督協会賞」でのポン・ジュノ監督(右)

俳優ソン・ガンホとの因縁

ポン・ジュノ監督は、人に恵まれた監督の1人だ。一緒に働く人を尊重し、気遣いながら築き上げたインフラとも言える。

映画人生を一緒に構築してきた俳優ソン・ガンホとの因縁も、些細な気遣いから始まった。

ソン・ガンホは以前、とあるインタビューでポン・ジュノ監督との出会いをこう語っている。

「当時は、映画のオーディションで落選した俳優には、連絡をくれないのが普通だった。ところが、『モーテルカクタス』(1997年)の助監督だったポン・ジュノ監督が、僕に(オーディション落選の)音声メッセージを残してくれた。すごく丁寧に、心を込めた長いメッセージだったので、印象深かった」

その気遣いと感謝の気持ちを覚えていたソン・ガンホは、売れっ子になった5年後にポン・ジュノ監督から『殺人の追憶』のオファーを受け、「5年前からあなたの映画に出演するのを心に決めていた」と、二つ返事で引き受けた。

『殺人の追憶』を皮切りに、『グエムル-漢江の怪物-』(2006年)、『スノーピアサー』(2013年)、『パラサイト』と、タッグを組んだ全作品を大ヒットさせた2人の“最強ぶり”は、ついにアカデミー賞で証明されることとなった。

映画『殺人の追憶』に主演したソン・ガンホ(左)、キム・サンギョン(右)

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