「過度な飲酒は脳卒中、記憶力の損傷、または認知症を誘発します」
YouTubeやSNSを通じて、個人の自由で多様なメディア創作活動が脚光を浴びている昨今、芸能人がお酒を飲みながらゲストと話す“飲酒放送”が大きな人気を得ている。
だが飲酒放送が増えたことで、楽しみだけが増えているわけではない。
人気タレントのシン・ドンヨプは、YouTubeチャンネル「切ない(乾杯する)兄シン・ドンヨプ」を通じて、自分自身のリミットを超えた。
「切ない兄シン・ドンヨプ」は、ゲストとお酒を飲みながら虚心坦懐に対話するコンテンツだ。この番組を通じて、スターたちの舌がもつれたり、よろめいたりする姿まで見られる。テレビでは見られなかった姿だ。お酒の造詣が深いシン・ドンヨプと“でしゃばり”の芸人チョン・ホチョルの組み合わせも、また別の面白さを与えてくれる。
その高い影響力を証明するかのように、過去にシン・ドンヨプが振られた女優、イ・ソラまで出演して大きな話題を集めた。
人気ラッパーのイ・ヨンジのYouTubeチャンネル「用意したものは何もないが」は、終映して6カ月近くたったが、依然としてチャンネル登録者は340万人をキープしている。
この番組もイ・ヨンジとゲストがお酒を飲む形式だが、若者世代から圧倒的な支持を受け、愛された。番組を通じて、BTS・JIN、BLACKPINK・ジス、aespa・カリナ、IVE・ユジンなどが率直な魅力を披露した。
芸能人が“作ったお酒”も人気だ。
法人の代表理事でもある歌手パク・ジェボムは、2022年に蒸留焼酎「ウォンソジュ」を発売。ザ・ヒュンダイ・ソウルにポップアップストアが設置された公式ローンチのイベントには、多くの人が殺到し、初日だけで準備した2万本のうち1万本が売れた。
さらに大手コンビニGS25の陳列台に上がった後は、酒類商品全体の売上1位を記録。同年、GS25だけで500億ウォン(約50億円)の売り上げを計上した。
愛飲家として知られる歌手ソン・シギョンも今年、自ら開発したマッコリを発売する予定だ。
ソン・シギョンは2023年から忠清南道・唐津(タンジン)市の醸造所と一緒にマッコリを開発してきたという。昨年9月には自身のYouTubeチャンネルを通じてアルコール6度、8度、12度の3種類のマッコリを紹介した。彼は「添加物が入っていない。米と麹、水で作った」と自信を示した。
その他にも、LOONA(今月の少女)出身のチュウがBGFリテールと協力して作ったハイボール「ハイチュウ」を発売。昨年末にはT-ARA・ヒョミンが「ヒョミンサワー」を、女優のイエルが「コニャックハイボール」を披露したりもした。
スターたちの酒類事業は大きな経済効果が期待できる。他の新商品と違い、マーケティングで圧倒的な優位を占めるからだ。スターの名前をつけてローンチされるだけに、信頼度も高い。
またYouTubeを通じた“飲酒放送”は、動画の間に表示される広告で酒類製品を広報しながら、さらに飲酒放送のメリットを増やす。これまで見られなかったスターたちの姿を見物する楽しさは、おまけなのだ。
ただどんなことにも光があれば影もあるもの。適切な量の飲酒は雰囲気を盛り上げるが、飲み過ぎて泥酔した姿は児童や青少年に、飲酒の歪曲された認識を与えてしまう可能性があるとの指摘が尽きない。
韓国政府もこの問題を認識している。刺激的な“飲酒放送”が増えたことにより、保健福祉部と韓国健康増進開発院は2023年11月、「メディア飲酒シーンのガイドライン」を既存の10項目から12項目に増やす改正を行った。
追加された2つの項目は、「飲酒行為を過度に浮き彫りにしたり、美化したりするコンテンツは年齢制限等を通じて、子供と青少年の接近性を最小化しなければならない」と、「警告字句等で飲酒の有害性を知らせなければならない」だ。
以降、飲酒放送ごとに“警告文”が入るようになったが、単純な文面では実質的に児童・青少年の接近を防げないという限界は明らかだ。さらに積極的なモニタリングや制限などで保護する必要があるとの声が高まっている。
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