「模範生ではなかった。目立ちたかったし、限りなく足りない人だった。しかし、学生時代全てで“いじめ”の加害者と誤認され、“第2のヨンジン”と烙印を押されたのが悔しくてたまらない」
女優のシム・ウヌは最近、自身のSNSにこのような文章を記した。ここで言及された“ヨンジン”とは、Netflixオリジナルシリーズ『ザ・グローリー ~輝きしき復讐~』に登場した“いじめっ子”のことだ。
2020年のドラマ『夫婦の世界』(JTBC)で、“デート暴力被害者”という役で名を広めたシム・ウヌは、同年放送のバラエティ番組『ON&OFF』(tvN)でヨガ講師と女優業を両立させる姿を公開し、徐々に人気を集めていた。
しかし、学生時代のいじめ加害者という烙印を押されたあと、女優シム・ウヌの時計は止まってしまった。当時、彼女がメインキャストとして出演したドラマ『舞い上がれ、蝶』(原題)は撮影こそ終えたものの、放送されず倉庫で眠っている。
いじめ加害疑惑が解消されていない俳優を、リスクに耐えながら起用する製作者は珍しい。シム・ウヌは現在、個人ヨガクリニックを運営しながら再起を模索している状況だ。
シム・ウヌのことをよく知る芸能関係者は「彼女の学生時代がどうだったのか、いちいち知ることはできない。しかし、過去を心から反省する俳優に、“過去と今が違う”として生業である演技生命を絶つことが果たして正しいことなのか、それによって多くの人の生計がかかった一本のドラマが日の目を見られないのか考えてみなければならない」と指摘した。
厳しい状況に置かれているのはシム・ウヌだけではない。2021年、突如、韓国芸能界を襲った“学生時代のいじめ問題”に巻き込まれた多くの役者たちが、悔しさやもどかしさを訴えている。
2020年、『悪霊狩猟弾:カウンターズ』(tvN)でブレイクした俳優チョ・ビョンギュは翌年、一転して悪の主人公になってしまった。
ニュージーランドで学生時代を過ごしたチョ・ビョンギュが、いじめを主導して学友たちを苦しめたという情報がネット上に登場したのだ。俳優業のみならず、バラエティ番組のMCも務めるなど、まさに“うなぎ上り”だったチョ・ビョンギュの翼は折れてしまった。
その後、チョ・ビョンギュは重ねて潔白を主張していたが、結局は芸能界活動を暫定的に中断。現在は、今年下半期に放送予定の『悪霊狩猟団』の続編を撮影中だという。
ただ、ドラマ関係者たちは“チョ・ビョンギュリスク”を注視している。2021年以後、チョ・ビョンギュに対する否定的な世論は静まったが、いつ再燃するかわからないためだ。
また俳優のドンハ、Apinkのパク・チョロンなどは、自身をいじめの加害者に追い込んだ人たちを告訴している。
ドラマ『人生最高の贈り物~ようこそ、サムグァンハウスへ~』(KBS2)で知られるドンハは、いじめ加害者に追い込まれたことで役者生命の危機に瀕した人物だ。
ドンハは自ら学校を訪問して当時の担任教師に会い、虚偽の文を残した人たちをサイバー捜査隊に告訴。だが、発端となった暴露文は削除され、容疑者の人数などを特定できず捜査は難航し、終結した。
パク・チョロンもいじめ疑惑の提起者を虚偽事実適時名誉毀損および強要未遂罪で告訴した。しばらくはネット上で攻防を交わしていたパク・チョロンと疑惑提起者は昨年、誤解を解いて告訴を取り下げた。
一方で、依然として“校内暴力”のくびきから逃れられない人たちもいる。いじめ加害者と名指しされた女優のパク・ヘスは、出演ドラマ『Dear.M』(KBS2)は放送が無期限延長される事態にまで発展。昨年行われた第27回釜山(プサン)国際映画祭で、映画『君と私』の観客との対話の席に参加し、「この状況から逃げず、向き合いながら最善を尽くして解決しようと思う」と明らかにしたことがある。
これらの問題は、校内暴力が殴り合いなどの物理的な暴力ではなく、「心理的な暴力」という点にある。被害者たちは過去、加害者だった芸能人たちがいじめを主導したり、言葉の暴力などを持続したと主張する。
また一部の被害者は、「加害者が私を睨みつけて心理的に萎縮したので、これもまた暴力」という主張を展開したケースもあった。
このような主張は、個人の経験や未熟な10代のメンタルヘルスなど、さまざまな状況によって異なるように受け止められ方をしている。このような理由で加害者と断定された人たちが最も悔しがる部分だ。
大多数のドラマ製作者は「俳優ジスのケースのように、明確に物理的な暴力を使っていなければ、加害者とされた俳優側の話も聞いてみなければならない」と口を揃えている。
以前のように、数百人の俳優やスタッフが力を合わせたドラマが、俳優1人の疑惑によってこれ以上死んでしまわないために、より成熟して対処することが必要な時だ。
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