『弱いヒーロー 』は現実的でありながらも、ドラマチックだ。ハン・ジュニ監督の前作である『D.P.』では軍生活の中に深く染み込んだ不条理と暴力などに焦点を当てたとすれば、『弱いヒーロー』は高校に視線を向けた。
被害者と加害者、傍観者の曖昧な警戒、そして抜け出せない暴力のしがらみを描くという点で学校版『D.P.』を見ているかのようだ。
10代の高校生の間に密かに定着した位階秩序と糸のように絡み合った校内暴力、そして青少年による麻薬、賭博、家出など社会的な問題を惜しみなく露出させている。
高校1年生たちの行動とは信じがたい巧妙で残忍性のある暴力に向き合っていると、何か分からない不快さもあるが、不合理な暴力に対抗する3人の友人のそれぞれ異なる方法のアクションが妙な痛快さを与え、もどかしいと思う暇がない。
むしろ残念なのは大人たちの姿だ。10代の青少年たちが赤裸々になるほど立体的に描写される反面、大人たちは極めて断片的に描かれた。責任を回避しようとする警察、暴力を黙認しようとする先生、子供を放置する親。ドラマのメッセージを極大化しようと作った装置が繰り返し現れ、かえって常套句のように感じることもある。
それでもこのドラマが退屈にならないのは、“新鋭”たちのずば抜けた演技力のおかげだ。
大衆にはまだあまり馴染みのないパク・ジフン、チェ・ヒョヌク、ホン・ギョンなど若手俳優たちが劇をリードするという点で憂慮の見方もあるかも知れないが、1話を見れば「彼らの潜在力を信じてキャスティングした」という監督の果敢な決定に自ずとうなずける。
短編映画で10代の情緒を繊細に描き出したユ監督の特技が、俳優たちの演技にそのまま溶け込んだ。
特に、パク・ジフンの成長は驚くべきものだ。ウィンクと笑顔が印象的だった「アイドルパク・ジフン」の姿を完全に忘れさせた。
暗い顔色と生気のない目つき、自信のなそうな肩まで。パク・ジフンとは似合いそうにないヨン・シウン役で、視聴者の没入度を高める。後半にはパク・ジフンの生き生きとした姿まで見ることができる。ボールペン、参考書、カーテンなど各種道具を活用して自分の体格より大きい相手を制圧する場面は、強烈なカタルシスさえ感じられる。
スホ役のチェ・ヒョヌクは前作『二十五、二十一』のムン・ジウンのアップグレードバージョンを見ているようだ。
『弱いヒーロー』の痛快さを刺激するアクションの大部分がチェ・ヒョヌクから登場する。今回が初めてのアクション演技とは思えないほど、長い手足とシャープな動きは女心を虜にするだろう。そのなかでも、見ていてスカッとするほどの蹴りのアクションが印象的だ。前作ですでに証明された巧みさと天然らしさは、今作では緊張感をほぐす多様な笑いのポイントとして出てくる。
これといったアクション演技はないが、全身でボムソクを具現化したホン・ギョンは『弱いヒーロー』の変化球のような存在だ。
すぐ壊れてしまいそうな小さくて細い体つき、白い肌の彼は『D.P.』の後輩を苦しめていた上等兵リュ・イガンと同一人物なのかを疑うほど完全に違う人物を演じる。守りたくなるほどの純粋な少年の姿から劣等感に包まれ、“黒化”する姿まで。
劇中、最も感情の振れ幅が大きいキャラクターだが、ホン・ギョンは繊細な演技でこのすべてをこなす。一寸先も予想し難い緊張感が小さな体格から湧き出るようにするのはホン・ギョンという俳優が持つ力だ。
この他にもシン・スンホ、イ・ヨン、キム・スギョム、ユン・ジョンフンなどもそれぞれ存在感を発揮し、劇の密度感を高める。
『弱いヒーロー』は公開直後、一気に2022年ドラマ有料加入者1位を記録している。各種SNSを通じて、ドラマに対する肯定的な評価が口コミで広がっている状況だ。青少年視聴不可、有料コンテンツという壁があるにもかかわらず、wavveを生かす強いヒーローになるか注目が集まっている。