「あまりにも胸が痛むことだが、下手をすれば芸能産業全体に悪影響を及ぼすのではないかと心配だ」
韓国芸能界が10月29日にソウルの繁華街・梨泰院(イテウォン)で起きた大事故の余波を警戒している。150人以上の若い命が犠牲となった大惨事だ。
今回の惨事で新人俳優のイ・ジハンさんが死亡し、芸能界全体が大きな衝撃に陥った状態だ。弱り目にたたり目で、事故の原因として一部の有名芸能人の名前が挙がるなど、根拠のないデマまで量産されている。
韓国政府が11月5日までを“国家哀悼期間”に指定したことにより、各種バラエティ番組が放送中止となり、K-POP界や映画界の広報スケジュールもオールストップした。
現在の社会の雰囲気が長く続いた場合、この2年間のパンデミックを辛うじて乗り越えた韓国芸能界全般に悪影響を及ぼすのではないかと憂慮する声が高まっている。
最も緊張しているのは音楽界だ。
とある音楽界の関係者は、「地上波放送が2週間、放送休止するという噂が出回っている」とし、「直ちに今週を予定していたアルバムの発売は延期したが、すぐに音源を出して広報しなければならないグループは事実上、活動をあきらめなければならないレベル」と耳打ちした。
また別のK-POP関係者は、「天安沈没事件やセウォル号沈没事故のときは音楽放送が5週間も休止となった」とし、「全国民がトラウマに陥るほど惨憺たる事件なので、エンターテインメント業種が生業である人々まで罪人になった気分で強制休業に入った」と業界の雰囲気を伝えた。
予定されたコンサートは、完全にキャンセルされている。とある歌謡関係者は「11月中旬からコンサート会場がいっぱいになった状態で延期も難しい状況」とし、「フリーランスのスタッフたちは適切な補償も受けられないまま、取り消しに耐えなければならない。しかし、どこにも訴えることはできない」ともどかしがった。
悲しみを強制する社会的な雰囲気から抜け出し、遺族を慰める趣旨で公演を強行するところもある。
映画界も状況は似ている。
ただでさえ劇場の状況が良くないうえに、12月のハリウッド大作『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の公開を避けて、11月の封切りを控えた韓国映画が少なくない状況で、ややもするとまともな広報なしに映画公開に踏み切らなければならないという危機感が漂っている。
実際に11月中旬に公開予定のとある映画は、大々的に準備したVIP試写会および観客とのイベントを縮小した。同映画関係者は「映画の場合、俳優と観客が劇場で会うこと以外には特別な広報手段がないのに、それさえ叶わない可能性があるので悩みが大きい」と打ち明けた。
韓国芸能界は今回の事態が、また別の“11月の怪談”とならないか注視する雰囲気だ。
“11月の怪談”は、1987年11月1日に亡くなったユ・ジェハさんと、1990年11月1日に亡くなったキム・ヒョンシクさんが同じく11月初日に帰らぬ人となったことから始まった。以降、プロ野球の正規シーズンが終わる11月頃、芸能界の事件・事故が顕著に報道されるという意味で“11月の怪談”という名前が付けられた。
とある芸能関係者は「多くの若者の悲惨な死と、それによって芸能産業全体が萎縮すること自体が11月の怪談だ」と残念がった。
■哀悼の強要?「公演中止だけが答えなのか」と声上げる韓国歌手たち
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