熱気球からのドローンショーや華麗な花火まで、コンサートのスケールも歴代級だった。
しかしIUファンにとっては残念なニュースもあったようだ。彼女の代表曲ともいえる『Good Day』と『Palette』が、この公演を最後にコンサート会場では聞けなくなったことである。
IUの3段高音で有名な『Good Day』は自身最大のヒット曲であり、IUという歌手を大衆に知らせた出世曲でもある。ほかにもBIGBANGのG-DRAGONがフィーチャリングして話題になった『Palette』も、音源チャートで着実に愛される代表曲だ。
アーティストが自分の代表曲を「これ以上歌わない!」と宣言するのは非常に珍しい。
大衆が聞きたいと思う曲を正式なセットリストから外し、その期待に応えられる新しいヒット曲を作らなければならないという負担もある。
それでもIUは、今の自分を作ってくれた代表曲をセットリストから“卒業”させると決めたのは、最も「IUらしい」理由であり自信として映る。
今年、数え年で30歳を迎えたIUは、変化と挑戦について語った。
これまで、『Twenty-three』や『eight』など年齢を歌に込めて自分の現在を歌ってきたIUにとって、年齢はアーティストとしてインスピレーションの源だった。18歳で歌った『Good Day』も、25歳で歌った『Palette』も当時のIUを盛り込んでいる。
コンサートでIUは『Palette』に別れを告げ、「この歌は25歳のジウンに残す。あえて、この曲にずっとしがみつかなくてもよさそう」と話した。
また、全国民を虜にした『Good Day』のフィナーレ舞台では衰え知らずの3段高音を誇って30代でさらに大きくなるIUの音楽を期待させた。
『Good Day』や『Palette』と共にした20代のIUを見送るのは残念だが、次のチャプターを準備する30代のIUを待つこともやはりわくわくする。
30歳になった2022年は女優イ・ジウンとしてもカンヌ映画祭に足を踏み入れるなど意味ある成長の年だった。IUはドラマ『ドリームハイ』で演技生活をスタートし、ドラマ『最高です!スンシンちゃん』『キレイな男』『プロデューサー』『麗<レイ>~花萌ゆる8人の皇子たち~』『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』『ホテルデルーナ~月明かりの恋人~』などの作品に出演。
今年は日本の巨匠是枝裕和監督の作品『ベイビー・ブローカー』で長編映画にもデビューし、もう一度自分の限界を乗り越えた。
俳優ソン・ガンホやカン・ドンウォン、女優ペ・ドゥナなど有名な役者たちの中で自分の役割を果たし、映画俳優としての可能性を示した。さらに、『ベイビー・ブローカー』は第75回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に進出し、IUは女優として夢の舞台であるカンヌ映画祭に招待されたりもした。
30代のIUは『ベイビー・ブローカー』に続き『ドリーム』(原題)など長編映画に本格的に挑戦し、映画俳優として自分の道を歩む予定だ。
また、『椿の花咲く頃』などを執筆したイム・サンチュン作家の新しい作品への出演を最終検討中だという。該当作品はIU主演のヒット作『マイ・ディア・ミスター』のキム・ウォンソク監督が演出することが知られ、より一層期待を集めている。
芸能界のとある関係者は「IUというアーティストが持つ象徴的な意味が大きい。アイドルグループが人気を博しているなかで女性ソロアーティストとして数多くのヒット曲を保有し、今の地位を守り続けるのは容易ではなかったはずなのに、常に変化と挑戦のために努力してきた結果だろう。今年、14周年でもファンの名前で2億ウォン(約2000万円)を寄付するなど後輩たちにとっても良い見本になっている」と伝えた。
◇IU(イ・ジウン) プロフィール
1993年5月16日生まれ。韓国・ソウル出身。2008年にソロ歌手としてデビューした。芸名のIU(アイユー)は“I”と“YOU”の合成語で「あなたと私が音楽で1つになる」という意味が込められている。女性ソロ歌手としてトップに君臨しつつ、女優業も並行。2011年のドラマ『ドリームハイ』で連ドラ初出演&初主演を果たし、『麗<レイ>~花萌ゆる8人の皇子たち~』『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』『ホテルデルーナ~月明かりの恋人~』などで主演を務めた。2022年には日本の巨匠・是枝裕和監督が手がけた『ベイビー・ブローカー』で母親役を演じた。女優業は本名の「イ・ジウン」で行う。