実際に会ったク・ヘソン(35)は、“愛”にあふれる人物に見えた。
これまでさまざまな作品を通じて演技力を見せたク・ヘソンは、同時に映画の演出、絵、詩、エッセイ執筆などの分野で活発な創作活動を広げてきた。
そして最近は、自分の恋愛経験を盛り込んだ小説を発表し、周囲を驚かせた。
新作小説『涙はハートの形』(原題)を出版したク・ヘソンは、小説について「20代のとき、狂ったように恋愛した経験談を込めて書いた小説」と明らかにした。
『涙はハートの形』は、難しい性格の女性「ソジュ」と、拒否することができない魅力を持つ男性「サンシク」の恋愛を描いた小説だ。ク・ヘソン特有のはつらつとした文体と、彼女の独特な恋愛観が印象的な作品といえる。
ク・ヘソンは「もともとは20代のとき、映画のシナリオとして書いた文章だった。ところが時間が経って結婚をし、シナリオを再度読んでみると、もう自分では書くことができない文章だった。脚色して、小説として出そうと思った」と話した。
そして「最近、小さな本を所有したい若い層がかなりいるので、そんな本を出すことになった。出版社から出すことができなかったら、自分のインスタグラムで公開しようとまで考えた。私にとっては、どんなかたちであれ出せれば意味がある」と続けた。
小説のタイトルはもともと「ソジュ(焼酎)のサンシク(常識)」だった。「小説を書くとき自分が焼酎をたくさん飲んだから、ソジュとつけた」と笑うク・ヘソンは、「ところが出版社側から20代の読者に響くタイトルにしてほしいと提案され、変えることになった」と経緯を明かした。
「私はソジュでありながら、サンシクでもある。登場人物たちに、20代で狂ったように恋愛したときの自分を多く投影した。そのとき、なぜ自分がそうだったのかわからない」と再び笑った。
結婚をした後、恋愛小説を出すことに対する抵抗感はなかったのだろうか。
出版前に夫アン・ジェヒョンの許可をもらったというク・ヘソンは、「私に劣らず、夫も20代のときに恋愛をたくさんしていて、2人で記憶を共有しながら読んだ。互いの恋愛について、どちらがよりのめり込んでいたかでバトルもした」と冗談を言った。
『涙はハートの形』は、ク・ヘソンの恋愛経験が含まれてもいるが、ク・ヘソンの愛に対する探求が込められた作品でもある。
「恋愛というものがどのように始まって終わるのか。自分の経験を投影して“恋愛や愛とは何なのか”、“結婚が恋愛の完成か”を考えた」
文章を書くことはク・ヘソンにとって、どのような意味を持つのだろうか。これに対して彼女は、「哀悼の時間」と表現した。
ク・ヘソンは「文章を書くと辛かった時間を再び感じる気がする」とし、「本当に辛かったその瞬間には文章を書けないし、その感情が過ぎ去ったら、過去の感情をもう一度持ってきて文章を書き、哀悼して見送るのだ」と伝えた。
芸能人にとって、自分の恋愛経験を明かすことは簡単ではないだろう。しかし彼女はインタビュー中、自分の恋愛話を率直によどみなく明かした。
ク・ヘソンは、“20代のク・ヘソン”はどんな人物だったかという問いに、「愛に命をかけ、夏の虫のように火に飛び込んだ。恋愛に正直な人だった」とし、「彼氏の家にむやみに行って、待って、ドアを叩いて。それが可能な歳だった。お酒もたくさん飲んで、エネルギーにあふれ、エンドルフィンあふれる恋愛をたくさんした」と答えた。
彼女がした“狂った恋愛”の意味については、「あまりに幸せだったし、辛かった。私は好きな気持ちがあれば、隠せずにそれが全部表れてしまう人間だった。過去に出会った男たちのなかには、非公開に恋愛しようとする人がかなりいて、たくさん傷ついた。別れるときは別れるけど、今私たちが出会った瞬間が重要なのに、隠したらなんの意味があるのかと考えたからだ。でも今は、それを理解したので本当に良かった」と笑った。
そして「そんなことを何度も経験して痛みが尽きなかったから、だんだん恋愛に懐疑的になり、後には“恋愛はしない。私は平常心を見つけたい”といったマインドに変わった。30歳からそうなったようだ」と振り返った。
そんなときに、現在の夫であるアン・ジェヒョンがク・ヘソンの心に入ってきた。