韓国時代劇がピンチ?「歴史歪曲だ」「ファンタジーと割り切るべき」と賛否両論の現状

韓国ドラマ界では最近、ファンタジー時代劇を巡る議論が続いている。従来の時代劇とは異なる独創的な世界観や素材が、かえってマイナスなイメージをもたらしつつあるのだ。

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たとえば、韓国地上波SBSで3月23日からスタートした『朝鮮駆魔師』(原題)だ。エクソシズム・ファンタジー時代劇という新たなジャンルが初回から視聴者の注目を集め、同枠放送ドラマ中視聴率1位を獲得したが、一方で実際の歴史や人物を歪曲しているという論争に巻き込まれている。

『朝鮮駆魔師』の制作陣は、ドラマの放送前に「当ドラマに登場する人物や事件、具体的な時期などは歴史的事実と無関係であり、創作による虚構であることをお知らせします」という注意書きも公開している。にも関わらず、実際に放送がスタートすると太宗(テジョン)や忠寧(チュンニョン)大君、譲寧(ヤンニョン)大君といった実在の人物名がそのままドラマに使用されており、物議をかもす結果となった。

また、これとは別に多くの視聴者から「ドラマに登場するもてなし料理が中国式だ」という指摘も。SBS側はこれに対して「当該シーンの場所が“国の境に近い地域”という設定であったためで、他の意図はない」と釈明している。

『朝鮮駆魔師』の脚本を手掛けたパク・ケオク氏は、以前手掛けたドラマ『哲仁王后』(原題)でも「朝鮮王朝実録を否定するセリフがあった」「実在の人物を虚構的に描いている」といった批判を受けている。正統派時代劇から脱したフュージョン及びファンタジー時代劇は、もはや歴史歪曲問題から逃れられない状況に置かれたといえるだろう。

(写真左から)『朝鮮駆魔師』『哲仁王后』

しかし、実際には時代劇をめぐる“歴史歪曲議論”はかなり以前から絶えず浮上している。2000年代半ばにも『朱蒙〔チュモン〕』『太王四神記』をはじめとしたさまざまなフュージョン時代劇が人気を集めたが、現代の想像力を交えて一般的でない歴史上の人物の一代記をドラマ化したことに対する批判も尽きなかった。

2000年代半ばは、伝統時代劇からフュージョン時代劇に以降しつつある変化の時期でもあった。『朝鮮駆魔師』や『哲仁王后』に批判が集まっている現在の状況は、そこからさらに一歩進んで“時代背景だけを過去に移した”ファンタジー時代劇に流れが変化する過程なのかもしれない。

実際に、ファンタジー時代劇はフィクションであることが前提となるため、より自由奔放な創作が可能という側面を持つ。一部では「フィクション前提と謳っているにも関わらず重箱の隅をつつくような批判は、創作活動を委縮させる恐れがある」という声も出ているほどだ。

ただ、現状では「韓国の歴史をテーマに新たな物語を作りだすにしても、実在の人物名を登場させるなら歴史的事実や事件を“創作活動”の一言で任意に利用してはならない」という指摘に傾けるべきという意見が圧倒的だ。『朝鮮駆魔師』や『哲仁王后』に対する指摘を見ても、実際の人物と事件をフィクション前提の作品で採用することは控えるのが賢明だろう。

ある放送業界の関係者は、「時代劇というジャンルにそもそも問題がある。中国とはそもそも文化に対する議論が尽きないため、視聴者も敏感にならざるを得ない」と見解を述べ、今の状況については「ファンタジー時代劇は正統派時代劇とは違い、基本的な世界観が異なる。実際の歴史的背景をモチーフにしてはいるものの、想像力による物語だという点を理解したうえで見るものだ。現在は時代劇が新たな風を吹かせるための“過渡期”といえるだろう」と説明した。

視聴者からの議論が依然として尽きないファンタジー時代劇。さまざまな批判がヒットの前の成長痛となるか、ファンにとっては今後の動きも気になるところだ。

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