過激化が止まらない? 韓国で“19禁ドラマ”が増加傾向にある理由

2019年01月30日 テレビ #韓国ドラマ

韓国ドラマが過激になりつつある。

昨年放送された『ミスティ~愛の真実~』(JTBC)、『先にキスからしましょうか』(原題、SBS)、『悪い刑事』(原題、MBC)に続き、最近放送開始した『キングダム』(Netflix)、『バベル』(原題、朝鮮放送)といった19禁(日本のR-18に相当)、あるいは未成年観覧不可とされたドラマが話題を呼んでいる。

直接的な表現はもとより、過激なシーンは一時的な関心を集めるために使われるのが一般的であったが、現在は全体的なストーリーの流れに沿った使い方もされており、高い相乗効果を発揮している。

また、ジャンル映画(アクションやサスペンス、ホラーといったジャンルの分類が容易にできる映画のこと)においても表現の限界を超えるための手法として活用されつつあり、作品としての完成度はもちろん高い視聴率を獲得することに一役買っている。

(関連記事:韓国ドラマが飽和状態。厳しい市場で生き残るための戦略とは?

左から『悪い刑事』『キングダム』『バベル』

もちろん、これまで韓国で19禁ドラマが放送されなかったというわけではない。

2000年代にはケーブルチャンネルを中心に、ある程度煽情的なシーンを含んだ作品が“19禁ドラマ”として放送された。

2010年代に入ると、性的な表現よりも暴力シーンや猟奇的な表現がしばしば見受けられる19禁ドラマが続々と放送された。地上波MBCの『チング~愛と友情の絆~』『紅の魂~私の中のあなた~』をはじめ、『製パン王キム・タック』『ベビーシッター』(KBS2)などが19禁に指定されている。

今やケーブル、地上波、総合編成チャンネルという放送局の垣根を越えて、お茶の間全体で19禁ドラマの放送が目立つ。

しかし、一時的に注目を集めるために過激な表現を採用し、特定の話数のみを19禁としているドラマが大多数を占めており、作品そのものが19禁に指定されるドラマはほとんどない。

このように韓国で“19禁指定”のドラマが増えているにも関わらず、世間からの意見はまちまちだ。

一部では「19禁ドラマは、話題性と視聴率を得るための安易な手段」という主張とともに、お茶の間で煽情的及び暴力的な表現を用いたドラマが放送されること自体に否定的な姿勢を見せている。

また、19禁ドラマの分類基準や実効性そのものに疑問を持つ意見も少なくない。

映画やゲームが公開前に映像物等級委員会の審議を要するのに対して、テレビコンテンツは放送局が自主的に基準を設定することができる。

“放送後に問題が生じた場合は放送通信審議委員会から制裁を受ける”という決まりは存在するが、予め放送局が定めた基準に対して審議を行う機関が存在しないことから、“19禁”という指定そのものが曖昧になってくる。

Netflixのような映像ストリーミング配信も同様に、明確な分類基準を設けていない現状だ。

『キングダム』の予告ポスター

それだけでなく、ドラマというコンテンツの特性上、視聴者を限定することができない点も大きな問題とされている。

映画の場合はチケット購入の時点で年齢確認を行うなどして対象を管理することができるが、ドラマの場合は“事実上”の19禁表記となるため、各家庭がチャンネル設定や保護者の指導を徹底するほか制限手段がないのである。

テーマや舞台、時代背景などが多様化し、ジャンルが細分化され、人気を集めるのが全年齢対象の作品ばかりではなくなっているのが韓国ドラマ界の現状だ。

『バベル』の予告カット

特定の趣味趣向と世代をターゲットにしたドラマに対する否定的な意見は尽きないが、それでも19禁ドラマの持つ“表現の自由”、“領域の拡張”といった効果は、多くの視聴者から反響を得ている。

2019年の話題作として放送前から高く評価された『キングダム』や『バベル』もその例外ではないため、“19禁ドラマ”というコンテンツが今後の韓国放送業界に大きな影響を与えることは確実といえるだろう。

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