どれほど反省の意味で引退を宣言したとしても、終わりではない。俳優チョ・ジヌンには、まだ放送されていないドラマ『シグナル』シーズン2が残っている。
事実上、『シグナル』シーズン2の最も核心的な人物といっていい。少年犯罪歴のある俳優が演じた“正義の刑事”という点で、作品が受ける打撃は計り知れない。
そのため、現実的な問題が続く。来年のtvNの目玉作品とされる『シグナル』シーズン2に関連して、違約金問題が最大の関心事として浮上している。
2016年に放送されたドラマ『シグナル』は当時、絶大な人気と高評価を獲得し、社会現象にもなった名作だ。当時のtvNの歴代視聴率記録を塗り替えたドラマとしても知られる。
日本でも坂口健太郎、吉瀬美智子、北村一輝らが出演したリメイク版『シグナル 長期未解決事件捜査班』が2018年に放送された。
そんな人気作のシーズン2は、tvNの開局20周年に合わせて全8話の規模で2026年の編成が早くから予告されていた。脚本家キム・ウニをはじめ、キム・ヘス、チョ・ジヌン、イ・ジェフンなど、『シグナル』シンドロームを生んだ主役たちが続編に合流した。
このドラマは今年8月にすべての撮影を終えている。編集もすでにほぼ最終段階にあると伝えられている。
未解決事件を直接扱う刑事イ・ジェハン(チョ・ジヌン)は、『シグナル』の最も重要な人物だ。パク・ヘヨン役のイ・ジェフンや、チャ・スヒョン役のキム・ヘスも重要な役割ではあるが、イ・ジェハンを支える形だ。
事実上、物語の核心を握り、感情を爆発させるのはイ・ジェハンであり、それほどチョ・ジヌンの役割は大きい。
そんな期待作が公開を控えているなか、30年前の少年犯罪歴が明らかになり、チョ・ジヌンは引退を宣言した。その後も酒席での暴行事例が次々と明るみに出ており、イメージは継続して損なわれている。
『シグナル』制作陣にとっては、天災に等しい損害を受けたようなものだ。したがって、違約金を要求する可能性が高いという意見が出ている。
あるマネジメント会社A代表は「過去は、制作会社ができるだけ隠して進もうとする傾向があった。しかし主演俳優の過失による作品のダメージが大きくなり、契約時からプライベートに問題が発生した際に備えた条項を敏感に扱っている」と語った。
ドラマ・映画・広告などの出演契約には、社会的物議などで品位保持義務を違反した場合、それに応じた違約金が明記されている。主演俳優の1話あたりの出演料が数億ウォン(数千万円)台であることから、チョ・ジヌンはギャラの倍額にあたる数十億ウォン(数億円)を支払わなければならない可能性もある。
数十億ウォンの違約金で済めばまだ良いほうだ。万が一『シグナル』シーズン2の放送自体が難しくなるような事態になれば、数百億ウォン(数十億円)の制作費に対する違約金訴訟が提起される可能性もある。
別のマネジメント会社B代表は「制作会社の立場では、共に苦労してきた家族のように感じる心理がある。『シグナル』シーズン2が放送されない可能性は低く、違約金を今の段階で検討することはないだろう。より深刻な問題が生じれば別だが、現時点では放送を念頭に置き、最低限の違約金で済ませるとみられる」と見通した。
30年ぶりにチョ・ジヌンの過去が掘り返されたことについては、さまざまな議論が起きている。政界にまで飛び火し、「チョ・ジヌン引退」について多くの意見が出ている。「厳しすぎる」という立場と、「軽率な擁護こそ危険だ」という立場が対立しており、職業的特性を考慮してより慎重であるべきとの意見に重きが置かれている。
A代表は「芸能人という職業の特性上、多くの人に影響力を及ぼすため、行動に注意が必要なのは確かだ。そばで見ている立場として、芸能人の感情労働が非常に大きく苦しいこともわかっているが、それでも過分な愛情と名誉、経済的報酬を得る位置にいる以上、甘受すべきだと思う。耐えられないなら去るべきだ」と述べた。
◇チョ・ジヌン プロフィール
1976年4月6日生まれ、本名チョ・ウォンジュン。2004年の映画『マルチュク青春通り』でデビュー。以降、『悪いやつら』(2012)、『最後まで行く』『バトル・オーシャン 海上決戦』(2014)、『お嬢さん』(2016)、『毒戦 BELIEVER』(2018)など幅広いジャンルの映画に出演してきた。また、人気ドラマ『シグナル』(2016)の刑事イ・ジェハン役としても知られる。
■少年院に…『シグナル』俳優チョ・ジヌン、過去の犯罪歴報道が波紋
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