『イカゲーム』シーズン3でひときわ輝いた俳優は、イム・シワンとノ・ジェウォンだ。
イム・シワンは繊細に変化していくキャラクターを見事に演じ、ノ・ジェウォンはヴィラン(悪役)の役割を忠実に果たした。
イム・シワンが演じた“ミョンギ”は、シーズン2では責任感のない人物だった。コイン投資の配信をしていたが、誤った情報により、自分だけでなく視聴者にも巨額の損失を負わせたユーチューバーだった。
妊娠中の恋人ジュニ(演者チョ・ユリ)も大金を失い、その額に耐えられず消息を絶った。
しかしシーズン3では違った。ジュニの子どもが自分の子であることを知り、親としての責任を果たそうとしたのだ。
シーズン2ではただの参加者の1人に過ぎなかったミョンギが、シーズン3では対照的な演技を通して鮮やかな存在感を示した。イム・シワンはミョンギを立体的に描くことに成功した。
シーズン2で善と悪の境界に立つ人物として演じ、シーズン3で善人へと成長する過程を、説得力を持って表現した。
最後のステージの演技でも神がかったエネルギーを見せた。ギフン(演者イ・ジョンジェ)との血にまみれた対決でも一歩も引かず、ドラマ『ミセン-未生-』(2014)のチャン・グレ以来の“人生キャラクター”を更新し、キャリアの頂点を築いたと評価できる。
一方、ノ・ジェウォンが演じた“ナムギュ”は、シーズン3で罪悪感なく参加者を殺害する人物の一人だ。
ミョンギが良心を取り戻して人間性を回復するのに対し、ナムギュは麻薬使用により道徳観を失っている。むしろ参加者を1人ずつ排除していくことに快感を覚えるタイプだ。
これは、タノス(演者T.O.P)がミョンギに倒されて生じた空白をナムギュが埋め、物語に新たな活力を吹き込んだ形だ。
ノ・ジェウォンの演技は、ナイフを持って路地を徘徊する場面で特に輝いた。獣が獲物を追うときのぎらつく目つきと、麻薬に酔い理性を失った表情が交錯し、独特なオーラを作り出した。
ミョンギが参加者を倒した後、血に濡れたナイフを見て罪悪感を抱くのに対し、ナムギュはその状況をむしろ楽しむ。「死ぬとき人の目の光がスッと消える」と、その瞬間をセリフで描写する。『イカゲーム』が持つ残酷さを今回のシーズンで最もよく表現したキャラクターといえる。
ノ・ジェウォンの今後がさらに期待されるのは、その幅広い演技力によるものだ。『殺人者のパラドックス』(2023)ではリベンジポルノの被害者を弄ぶ卑劣な演技から、『こんなに親密な裏切り者』(原題、2024)では独特のセリフ回しと発声で、純粋で温かい性格を持つ警察官役までこなした。
2人は今回の『イカゲーム』シーズン3で、世界中の視聴者に確かな存在感を刻んだ。
◇イム・シワン プロフィール
1988年12月1日生まれ。韓国・釜山広域市出身。2010年に9人組ボーイズグループZE:Aとしてデビュー。2012年にドラマ『太陽を抱く月』のホ・ヨムの青年期を演じて演技を始め、2014年のドラマ『ミセン-未生-』で俳優としての実力を証明。以降、ドラマ『王は愛する』『トレーサー』『なにもしたくない~立ち止まって、恋をして~』『イカゲーム』シーズン2・3、映画『非常宣言』『スマホを落としただけなのに』『ボストン1947』などに出演し、「演技ドル」(演技+アイドル)として最も成功した人物ともされている。
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