韓国の女性気象キャスター、オ・ヨアンナさんが生前、職場でのパワハラに苦しんでいたという疑惑が浮上するなか、彼女があからさまに“仲間外れ”にされていたという証言が飛び出した。騒動の舞台となっている大手放送局に対しても厳しい批判が相次いでいる。
現在、韓国で大きな波紋を呼んでいるのは、昨年9月に28歳の若さでこの世を去ったオ・ヨアンナさんの死。彼女の死は12月に公表されたが、1月27日にはスマートフォンから遺書のような“メッセージ”が発見されたと報じられた。その分量は原稿用紙17枚分、約2750文字にも及び、職場でのパワハラを訴える内容だった。
これにより事件への関心が再び高まると、翌日にはオ・ヨアンナさんと、加害者と目される先輩気象キャスターとのメッセージのやり取りや通話データが公開され、物議を醸している。
そんななか、オ・ヨアンナさんが気象キャスターとして勤務していた地上波放送局MBCの第3労組で非常対策委員長を務めるカン・ミョンイル氏は1月28日、YouTubeで故人が生前に受けていたパワハラ行為について言及した。
カン委員長によると、オ・ヨアンナさんが同僚からパワハラを受けるようになったきっかけは、2022年に人気トークバラエティ番組『ユ・クイズ ON THE BLOCK』(tvN)に出演したことだった。パワハラの内容は、6人いる気象キャスターのうち、オ・ヨアンナさんと彼女の同期を除く4人が独自のチャットルームを作り、彼女を意図的に排除するという、あからさまな仲間外れ行為だった。
それだけでなく、過酷な労働環境や労働条件についても指摘されている。気象中継のため早朝出勤が続き、生活リズムが乱れて不眠症に苦しんでいた。また、1年間の給与総額は約1600万ウォン(約170万円)で、月給は平均180~200万ウォン(約19~21万円)にも満たず、わずか130万ウォン(約14万円)程度だったことも明らかになった。
こうした状況を放置していたMBCに対し、カン委員長は「MBCは韓国最大の放送局のひとつではないか。大手放送局としての責任を果たし、適切な対応を取るべきだ」と指摘している。
また、オ・ヨアンナさんの死を巡り、国会議員からも厳しい批判の声が上がっている。
与党「国民の力」に所属する安哲秀(アン・チョルス)議員は1月30日、自身のFacebookでこの件に言及し、「職場でのパワハラは人生の基盤である職場を地獄にする社会悪であり、絶対に根絶しなければならない。故人の職場だったMBCの態度には失望した」と強く批判。
続けて、「家族を天国へ見送り、旧正月を迎える遺族の心情を思うと心が痛む。若くしてこの世を去った故人の冥福を祈り、遺族に深い慰めの言葉を伝えたい」と述べた。
さらに、「MBCは故人の死からすでに4カ月が経過しているにもかかわらず、何の調査も行わず、措置も講じていない。『故人が会社に通報していなかったため対応できなかった』という主張も無責任だ。フリーランス労働者である故人が会社に通報するのは現実的に難しく、被害者に責任を押し付けるような対応は許されない」と断じた。
そして、「今回の事件に対する批判をMBCへの攻撃と見なし、言論弾圧のように誤魔化すことは、故人を冒涜し、遺族を傷つける二次加害に他ならない。ニュースを通じて職場内のパワハラを数えきれないほど批判してきたMBCが、自らに対しては責任を回避するのであれば、それは典型的な“ダブルスタンダード”だ」と強調した。
日に日に増していくMBCへの批判。報道機関として、どのような対応を取るのか注目が集まる。
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