『キム秘書はいったい、なぜ?』(以下、『キム秘書』)では、パク・ソジュンが完璧主義者のナルシストを演じている。
制作発表会でパク・ソジュンは『キム秘書』に出演することになった経緯をこう説明していた。
「私が作品を選ぶ基準にしているのが、ジャンルというより物語とキャラクターです。この『キム秘書』は原作もありますが、とても魅力的であり、表現できることがたくさんあるドラマです。それで出演を決めました」
さらにパク・ソジュンは、撮影に臨むときの心構えをこう語っていた。
「原作にあるキャラクターを映像で立体的に演じることが課題でありました。実際は、監督の指導のもとで本当に楽しく撮影ができました」
この言葉の通り、パク・ソジュンは、原作ですでに知られているキャラクターを映像的にどのようにプラスに表現できるかに集中した。その成果はどのようにあらわれたのか。
『キム秘書』では、冒頭からパク・ソジュンが演じるヨンジュンという男をあらゆる場面を駆使して紹介していた。そこがこのドラマの一番の見どころではないか、と思えるほどだった。
【写真】「不動のキス職人」パク・ソジュン、愛犬との“イチャイチャ写真”公開
とにかく、他に誰もいないような完璧な人物をパク・ソジュンは演じる必要があった。いくつもの外国語をネイティブのように操り、会社の役員たちが集まった経営会議で誰もが驚くような経営上の数字を速射砲のようにしゃべったりする。
そして、大勢の女性の関心の的になるような立ち居振る舞い……このように、ヨンジュンという人物のすべてを見事な映像で見せていた。それはまさに「ビジュアルの帝王」と呼べるほどの姿だった。
一見すると、極端なナルシストでキザすぎるのだが、長身でスタイル抜群のイケメンが演じると、これは本当にその通りだな、と見ている人が納得してしまう部分があった。
それにもかかわらず、パク・ミニョンが扮するキム秘書が、急に仕事を辞めると言い出したところで、ヨンジュンはもろくも崩れていく。
「なぜ彼女は仕事をやめようとするのか」その理由がわからず迷い続けるのである。
キム秘書が仕事をやめるのは、父親から押しつけられた借金をすべて返し終えて、これからは自分なりの新しい人生を始めたくなったからなのだが、そういう生き方がまったく理解できないのがナルシストのヨンジュンだった。
むしろ、そのほうが人間的かもしれない。
完璧主義者が実は人の機微に鈍感なナルシストであった、というキャラクター設定が『キム秘書』のツボであり、それを演じるパク・ソジュンが本当にいい持ち味を発揮しているところに、このドラマの究極的な面白さがある。
(文=康 熙奉/カン・ヒボン)
前へ
次へ