パク・ソジュンとパク・ミニョンがダブル主演しているラブコメ『キム秘書はいったい、なぜ?』(以下、『キム秘書』)。特異なキャラクターを2人が絶妙な間合いで演じていて、見ていても本当に楽しくなる。
特に、キム秘書に扮しているパク・ミニョンが制作発表会のときにこう語っていた。
「この役を演じるにあたって、しっかりとダイエットして秘書にふさわしい身のこなしを心掛けました」
この言葉どおり、ドラマの中で見せるキム・ミソ(パク・ミニョン)の秘書ぶりは本当に申しぶんがなかった。プライベートでもバッグの中に、パク・ソジュンが演じるヨンジュンのネクタイを入れているほどで、どんな状況でも仕事を100%こなせるスーパー秘書なのである。
キャラクターの設定では、ヨンジュンは、どこからどこまでも完全無比な男だ。
大会社の副会長でありながら、いくつもの外国語をネイティブのようにこなし、数字の計算なら小数点以下まで答えを瞬時に出して会議で出席者の度肝を抜く。しかも、勤務中になまけた役員をすぐに解雇してしまう。仕事のうえで、これほど有能な男は他にいないと思わせるほどだ。
このように完璧な男に何の欠点もなければ、ドラマはラブコメにならない。どこから見てもスキがない男が、実は女心をまったく理解できない、というところに『キム秘書』のツボがある。
9年も支えてくれたキム秘書が急にやめると言いだしたことから、ヨンジュンはとても動揺していくのだが、彼の頭の中は「最高の境遇を与えているのに、なぜキム秘書はやめると言うのか?」という疑問でいっぱいになっている。
その末に、「キム秘書が私を愛しているからなのだ」という結論を出してしまう。
その根拠は、ヨンジュンが他の女性と親しげにしていたらキム秘書が涙を流した、ということだ。しかし、これはヨンジュンの思い込み以外のなにものでもない。
キム秘書の目がうるんでいたのは、極度の花粉症なのに花束を持たされていたからだ。ヨンジュンは大きな勘違いをしていた。
この勘違いから、次々にストーリーが大きく発展していく。こうした流れは、世に多いラブコメの定番であり、『キム秘書』もその本流をしっかり受け継いでいる。その上で、このドラマが破格の面白さを持っているのは、やっぱり、パク・ソジュンとパク・ミニョンという魅力的な俳優の持ち味が全開しているおかげだ。
主役とキャラクター設定がピッタリ合えば、ドラマは縦横無尽の面白さを発揮していくということ……その見本となるのが『キム秘書』なのである。
(文=康 熙奉/カン・ヒボン)
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