もはやラブロマンスは古い?“韓ドラ”に次世代の新風が巻き起こっている理由

2021年03月11日 テレビ #Netflix #韓国ドラマ

“韓ドラ”がラブロマンスの代名詞とされていたのは今は昔。現代の韓国では男女の逢瀬や禁じられた恋、悲劇のヒロインをテーマにした作品から脱皮した、様々なジャンルのドラマが韓国のお茶の間を席捲している。

【注目】韓国ドラのタイトルが10文字以上に長文化しているワケ

直近の作品で機先を制したのはNetflixでも好評配信中のドラマ『ヴィンチェンツォ』だ。本作の韓国での初回放送視聴率は平均8.7%(ニールセンコリア調べ、韓国首都圏基準)で、tvNの土日ドラマ史上3番目の高記録で好調な滑り出しを見せた。

イタリアンマフィアの弁護士というテーマで“ダークヒーロー”を標榜した『ヴィンチェンツォ』は、ブロックバスターを連想させる序盤から、ストーリーが進むにつれてコメディ色が増し、愉快さとアクションを兼ね備えた良作だと評されている。

(画像=tvN)『ヴィンチェンツォ』

イ・スンギの復帰作として話題を集めるtvNドラマ『マウス』(原題)も外せない。サイコパスを題材にした『マウス』は、初回からノンストップな展開で、19禁という枷をはめられながらも5%近い視聴率で安定的したスタートを切った。

過度に残酷なシーンが続いたため、不快さを感じたという反応も少なからず見られたが、主演のイ・スンギ、イ・ヒジュンと、サイコパスという素材を今後どのように調理していくのか注目が集まっている。

(写真=tvN)『マウス』(原題)

タイムスリップものからポン・ジュノ映画を想起させる作品まで多彩なラインナップ

一方、JTBCも開局10周年特別ドラマ『シーシュポス:The Myth』で独創的なジャンルを世に送り出した。未来を変えるために時間と空間を行き来するチョ・スンウとパク・シネが活躍し、従来のタイムスリップものとは一線を画す新鮮な展開で注目を集めている。

(写真=JTBC)JTBCドラマ『シーシュポス:The Myth』

シン・ハギュンとヨ・ジングが演じる2人の警察官によるサイコロジカル・チェイス・スリラーを描いたJTBCドラマ『怪物』(原題)も、マニア層を中心に好評を博している。

「映画『殺人の追憶』(2003年、ポン・ジュノ監督)のような、レトロな感性が込められた韓国的情緒あふれる作品」というイム・ナヨン監督の言葉通り、主演のシン・ハギュンとヨ・ジング2人による繊細でエモーショナルな演技が印象的だ。

OCNが『悪霊狩猟団:カウンターズ』の後続として放送中のタイムワープ政治ミステリー『タイムズ』(原題)は、大統領の死を防ぐために時空間を行き来しながら、危険な真実と向き合う2人の記者イ・ソジン、イ・ジュヨンによる物語だ。タイムスリップというテーマに目新しさはさほど無いが、“政治”というテーマを盛り込みメッセージ性を強調している点で差別化を図っている。

(写真=OCN)『タイムズ』(原題)

3年ぶりにドラマへと復帰したキム・レウォンの出演で話題を集めたtvN『LUCA:The Beginning』(原題)も、“人類の進化”という壮大なテーマを基に独創的な世界観を構築し、5%台の安定した視聴率を維持したそうだ。

ラブロマンスよりも多様なジャンルの作品が作られ始めたワケ

このようなアクション、推理、ミステリー、SFといった作品だが、かつては大衆向けというよりも主にマニア層に人気が多かったジャンルだ。

しかし現代においてNetflixをはじめとしたストリーミング動画サービス(OTT)が隆盛し、新しい作品が試みられるにつれ、上記のようなジャンルの間口も広くなった。

とあるドラマ制作会社の関係者は「かつては韓国ドラマといえばロマンス作品だったが、今は様々な海外ドラマの流入とともに視聴者の欲求も多様化し、韓国ドラマも特定ジャンルを際立たせた特色あるジャンルが多く登場するようになった」と説明している。

これからもこの風潮は続く見通しだ。現在韓国では3月22日に放送がスタートするエクソシズムファンタジー時代劇『朝鮮駆魔師』(原題)が、目下の話題作だ。

(写真=スタジオフレックス、CRAVE WORKS、Lotte Cultureworks)『朝鮮駆魔師』(原題)劇中カット

『朝鮮駆魔師』は、Netflixを通して全世界で“コリアン・ゾンビ”旋風を巻き起こした『キングダム』シリーズを想起させるテーマのため、コリアン・ゾンビというジャンルに新風をふかせることができるのかに注目が集まっている。

2021年も注目作が目白押し

OCNの人気シリーズ『ボイス』続編のシーズン4も、前回からおよそ2年ぶりの公開を控えており、2021年下半期には、ミステリー悪霊スリラー『ホームタウン』(原題)の放送も予定されている。

朝鮮版ゾンビ作品の『キングダム』、韓国式クリーチャーが登場する『Sweet Home -俺と世界の絶望-』など、これまでになかった独特でインパクトの強いテーマが韓国ドラマの新たな地平線を開拓しており、この流れはNetflixなどから地上波のテレビドラマへと影響を及ぼしている。

(画像=Netflix)『Sweet Home-俺と世界の絶望-』

とあるテレビ関係者は「新しく多様な試みは、“韓国式ジャンル”にとって良い手本になっている。韓国だけの独特なストーリーとキャラクター、世界観を備えたドラマが韓国内外で熱い反応を得ており、その熱気は続くものとみられる」と予想している。

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