世界が今、K-POPの本拠地・韓国へと押し寄せている。主要チケット販売サイトを通じたK-POP公演の海外販売量は、過去1年間で110%以上も急増し、爆発的な成長を見せている。
しかし、その熱狂の裏側には深刻な「成長痛」も潜んでいる。入手困難を極めるチケット争奪戦、正規価格の数十倍で取引される転売チケット、そして急増する需要にまったく対応できない脆弱な公演インフラ。これらがK-POP公演の持続的な成長を脅かす影となっている。
韓国の与党・共に民主党のヤン・ムンソク議員が文化体育観光部から入手した資料によると、Nol Universe、Melon Ticketなど韓国の主要チケットサイトでの海外販売枚数は、2022年の約6万4000枚から2024年には45万3000枚へと、3年間で7倍以上に急増したという。
これは、K-POPアーティストたちのコンサートを筆頭に、韓国の公演文化に対する世界の関心が、実際の購買行動へとつながっていることを示す数字だと言える。
しかし、韓国を訪れる海外ファンたちが満足できる大規模公演会場は極めて不足している。現在、韓国内で1万人以上を収容できる屋内公演施設は、高尺(コチョク)スカイドーム、KSPOドームなどわずか5カ所しかない。
一方で日本は、東京ドームをはじめとする5大ドームのほか、1万人以上収容可能な屋内アリーナが29カ所ある。アメリカは20カ所以上の閉鎖型ドームを保有している。
こうしたインフラ格差は、K-POPの成長を韓国国内でも伸ばす上で大きな障害となっている。ヤン議員は「K-POPの爆発的な成長を国家的な文化競争力へとつなげるためには、大型アリーナの建設を含む公演インフラの拡充が不可欠だ」とし、「政府は予算確保とともに中長期的な計画を策定すべきだ」と強調した。
野党・国民の力からも「Kカルチャーの地位にふさわしいインフラ整備が急務だ」として、2027年にソウル・チャンドンに建設予定の「ソウルアリーナ」プロジェクトを後押ししている。
公演会場の不足は結局、「血の気が引くほどのチケット戦争」を招き、それが転売市場を肥大化させる結果につながっている。
共に民主党のパク・スヒョン議員が公開した資料によると、公演チケット転売に関する通報件数は2020年の359件から2022年には4224件へと10倍以上に急増し、その後も高水準を維持している。
実際の事例はさらに深刻だ。10月末に開催されるNCT WISHのコンサートでは、定価19万8000ウォン(約2万円)のVIP席がオンライン上で40倍を超える800万ウォン(約80万円)で取引されるなど、ファンの切実な思いにつけ込む違法取引が横行している。
現行法では、マクロプログラムを使った不正予約と高額転売が同時に立証されなければ処罰が難しく、実際的な取り締まりは困難な状況にある。2023年以降、約2年間に受け付けられた通報のうち、発券取り消しなど実質的措置に至った「有効通報」はわずか206件に過ぎなかった。
パク議員は「チケット転売問題を担当する人員が、韓国コンテンツ振興院内にたった1人しかいないのが現実だ」と指摘し、「政府は専任スタッフを増員し、チケット販売業者・プラットフォームと連携したリアルタイム監視体制を構築するなど、根本的かつ先制的な対策が急務だ」と訴えた。また、厳格な処罰規定の制定も必要だと強調した。
K-POP公演が真のグローバル文化産業へともう一段階進化するためには、爆発するファンの愛に応えられるインフラの整備と、健全で公正な観覧文化の確立という二つの課題を早急に解決する必要がある、という声が高まっている。
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