映画『アジョシ(おじさん)』でキム・セロンを守り抜いたウォンビン。しかし、それはあくまでフィクションの中の出来事だ。
現実の彼は、先輩俳優であり、同じ業界に生きる一人に過ぎない。故キム・セロンの死をめぐる混乱の中で、ウォンビンを引き合いに出す必要があるのか――その問いが投げかけられている。
発端は5月7日、YouTubeチャンネル『カロセロ研究所(以下、カセヨン)」が公開した、故キム・セロンと親交があったとされる“通報者A氏”の音声だ。A氏は米国ニュージャージー在住で、キム・セロンが生前に語った内容として、俳優キム・スヒョンとの未成年時代からの交際を主張。その証拠として録音データを提出した。
ここに突如として「ウォンビン」の名が登場する。A氏の妻が「(葬儀のとき)ウォンビンが私たちに直接会いに来た。静かに訪れてくれてありがたかった」と語ったのだ。彼女は「想像以上の意味を感じた」と強調したが、なぜウォンビンが訪れたのかという具体的な説明はなかった。
この件を受けて、ウォンビンの所属事務所は「驚くべき主張だ」と困惑した様子を見せた。関係者は「A氏の妻がなぜウォンビンに感謝しているのか、まったく理解できない。ウォンビンは弔問のために葬儀場を訪れただけで、それ以外に一切関わっていない」と明言した。
キム・セロンは2024年2月に急逝し、衝撃が広がった。ウォンビンは約15年ぶりに公の場に姿を見せ、ひっそりと弔問に訪れた。
だが、それ以降、彼の名は“高額の香典”や“7億ウォンの借金肩代わり説”など、根拠不明の噂とともに取り沙汰されてきた。沈黙を続けるウォンビンの態度が、時にウワサを「肯定」しているとも受け取られ、話が一人歩きしてしまっていた。
そして今回、A氏夫妻がウォンビンを“名指し”したことで、状況はさらに拡大。関係のない人物を強引に巻き込む構図に、ネット上でも「度が過ぎている」との声が上がっている。
一方、故キム・セロンとキム・スヒョンをめぐる対立は、日に日に激化している。キム・セロンの遺族は「未成年だったセロンと、キム・スヒョンが交際していた」と主張し、キム・スヒョンの所属事務所ゴールドメダリストは「交際は成人後に始まった」と反論。現在は法的対応に発展している。
しかし、カセヨンが公開した日記やメッセージ、写真、映像などは、真実の追及というより、むしろ「故人の過去を暴き立てる」行為に近い。遺族を後ろ盾にした“情報戦”の様相を呈している。
そんな中、ただ静かに弔っただけのウォンビンにまで疑惑や憶測が及ぶ状況には、多くの疲労感が広がっている。ウォンビンの所属事務所側も「ウォンビンが思わぬ方向で繰り返し取り上げられるのは本意ではない」と困惑を隠さない。
そして何より、これは故キム・セロン自身が望んでいる形ではないはずだ。彼女の死を巡る騒動に、これ以上“無関係な人々”を巻き込まないことが、何よりの供養ではないかという声が、いま強まっている。
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