韓国開催でトラブル続出の世界スカウト大会が、サッカー界に第2、第3の被害者を量産し続けている。
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今度の被害者は、プロサッカーKリーグ1(1部)のFCソウルとソウル施設管理公団だ。
韓国政府・文化体育観光部(以下、文体部)は「2023セマングム第25回世界スカウトジャンボリー」の「K-POPスーパーライブ」及び閉営式について、8月11日にソウルワールドカップ競技場で開催することを発表した。
この過程で文体部は開催地変更を2度行った。これにより、韓国サッカー協会(FA)が主催するFAカップと、Kリーグ1の各チームに損害が及んだ。
当初、「K-POPスーパーライブ」は全羅北道・扶安郡(チョルラブクド・プアングン)のセマングム野外ステージで8月6日に開催予定だった。ところが、開催日当日に急きょ11日への延期が発表され、会場も全州(チョンジュ)ワールドカップ競技場に変更となった。
全州ワールドカップ競技場は全北現代(チョンブク・ヒョンデ)モータースの本拠地だ。
この変更によって、イベント準備の関係で9日に全州ワールドカップ競技場で予定されていた全北対仁川(インチョン)ユナイテッドのFAカップ準決勝が開催不可能となり、延期が決定した。
しかしその後、台風6号「カヌーン」接近の影響により、変更翌日に「世界スカウトジャンボリー」組織委員会は全州ワールドカップ競技場でのライブ開催を取消に。結局、短期間でソウルワールドカップ競技場での開催に再変更となった。
ソウルワールドカップ競技場を本拠地とするFCソウルは、今週末はアウェイゲームを予定しているため、ホームで試合を開催する予定はない。
だが、10億ウォン(日本円=約1億円)を費やした“ハイブリッド芝”と、その管理に長期間注力してきたFCソウルとソウル施設管理公団は泣きを見ることになった。
管理主体であるソウル施設管理公団は、サッカー韓国代表の国際親善試合などが行われたソウルワールドカップ競技場の芝の状態に対する批判が巻き起こったことで、2021年10月に天然芝95%と人工芝5%を混ぜた“ハイブリッド芝”を新たに敷いた。
これによって、ソウルワールドカップ競技場は芝が剥がれにくくなり、卓越した排水システムを兼ね備えたグラウンドに変貌した。この芝張替えに10億ウォンの予算が投じられたことも有名だ。
ソウル施設管理公団はその後、韓国プロサッカー最上位リーグであるKリーグと韓国代表の国際親善試合が繰り広げられる“韓国サッカーの聖地”ソウルワールドカップ競技場の芝を、平常時にも最高水準に育てるという強い意志があった。
芝の毀損を防ぐため、大きな収入源となる大型コンサートの開催も受け付けなかった。
最近では今年6月、大規模な宗教イベント「ビリー・グラハム伝道大会50周年記念大会」がソウルワールドカップ競技場で開催されたが、そこでも可変席のあるE席にステージを設置した。芝を少しでも傷つけないよう、徹底的な管理下でイベントが行われた。
ところが、今回の「K-POPスーパーライブ」はS席のゴール付近にステージを設置しただけでなく、花道まで設ける構造を準備しているという。ピッチ内までステージが及ぶ構造だ。
周辺には芝を保護するためのパッドを敷いて観客を収容すると伝えられているが、芝の毀損は火を見るよりも明らかな状況だ。
行政安全部のイ・サンミン長官も9日、「世界スカウトジャンボリー」の非常避難現況ブリーフィングで「(ソウルワールドカップ競技場の)芝損傷の可能性はある」と認めながらも、「(損傷を)最小化する方法を講じている。文化体育観光部でさまざまな協議を経て、場所を変更したと聞いている」と言うにとどめた。
「世界スカウトジャンボリー」が問題続出で物議を醸すなか、韓国政府は「K-POPスーパーライブ」を通じてサッカー界に“一時的な犠牲”を望んでいる様子だ。
韓国サッカー界のとある大御所関係者は、「サッカーを越えて、スポーツがもたらす社会的価値に関する政府の認識レベルを代弁する事件だ。彼らにとっては“たかがサッカー”程度の認識ではないだろうか」と嘆いた。
そして、「韓国を代表するプロスポーツであるサッカーが、政府の影響力によって揺らぐような今回の事態は、会場運営主体が施設管理公団であることから始まる。クラブが長期賃貸であれ、条件に合う競技を通じて会場運営権を保有するシステムに変化することが必要だ」と提言した。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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