韓国の“ロナウド欠場騒動”の悪夢が蘇った夜だった。
7月25日、大阪府のヤンマースタジアム長居ではパリ・サンジェルマン(以下、PSG)対アル・ナスルのプレシーズンマッチが行われた。
この日、両チームで最も大きな関心を集めた選手は断然、PSGのブラジル代表FWネイマール(31)とアル・ナスルのポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウド(38)だった。両選手とも説明不要のスーパースターだ。
ロナウドは先発出場し、後半20分に交代されるまで縦横無尽の活躍を披露して拍手を受けた。得点こそなかったが、献身的なプレーでチームの攻撃をけん引した。
問題はネイマールだった。
ネイマールは今年3月に足首負傷で手術して以降、依然としてコンディションを回復できていない。まだ本調子ではなく、実戦復帰は難しい状況だ。フランスメディアは9月以降からネイマールの出場が可能になると見込んでいる。
PSGは後半20分に選手9人を交代したが、ネイマールはベンチに座ったままだった。試合に出場できない状況なのだから当然の選択だ。
にもかかわらず、ヤンマーに集まった多くの観客がネイマールのプレーを見たがっていた。
そして、忍耐力が限界に達した観客たちは、後半28分になると団体でネイマールの名前を叫び始めた。その後も引き続き、観客席からネイマールの名前が聞こえた。幼い観客の声も鳴り響いた。
また、後半アディショナルタイムには観客がピッチに乱入し、ネイマールからサインをもらおうと試みた。関係者が取り押さえたことで実現はしなかったが、ネイマールに対する切実さが感じられる場面だった。
会場に訪れた2万5432人の観客は、ネイマールのプレーを見ることができず苦々しく帰宅した。気が抜けたのか、試合終了前に少なくない観客が会場を後にしていた。
この光景に、4年前の“ロナウド欠場騒動”を思い出した。
2019年、当時ロナウドが所属したユベントスは夏に韓国を訪れ、ソウルワールドカップ競技場でチームKリーグ(Kリーグ選抜)とのプレシーズンマッチを行った。ただ、ロナウドは先発を外れ、ベンチに居座ったまま1分も試合に出場しなかった。
ネイマールと違うのは、ロナウドが特に負傷をしていたわけでもなかったということだ。結局、ひんしゅくを買ったロナウドは急速に韓国サッカーファンの大多数を失うことになった。
状況は違えど、今回ヤンマーに集った観客も似たような傷を負ったことだろう。ネイマールに次ぎいつ会えるかはわからないだけに、失望感は大きかったに違いない。
それでも、ネイマールはロナウドとは違った。試合後にグラウンドに居残ってランニングをしていた。その姿を見て、少なくない観客が彼に歓呼し、拍手を送っていた。
4年前のロナウドとは確実に異なる光景で、決して批判一色ではなかった。
ネイマールも観客に向かって手を上げ、申し訳ない気持ちを表現していた。これに、観客も大声を出して応えていた。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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