韓国代表の“至宝”の移籍に異変はなかった。
リーグ・アンのパリ・サンジェルマンFC(PSG)は7月9日(日本時間)、ラ・リーガのマジョルカから韓国代表MFイ・ガンイン(22)を獲得したと公式発表した。契約期間は2028年までの5年で、移籍金は2200万ユーロ(日本円=約34億4200万円)。背番号はマジョルカ時代と同じ19だ。
イ・ガンインがPSGと繋がったというニュースは、6月中旬から具体的に報じられ始めた。発端は、スペインメディア『マルカ』のPSGとマジョルカがイ・ガンインの移籍交渉を始めたという報道だった。
これ以前までは、イ・ガンインの移籍先はアトレティコ・マドリードが有力視されていたが、アトレティコ側が移籍金に難色を示したことで交渉は決裂し、PSGが新たな行き先候補に浮上したのだ。
その後、イ・ガンインのPSG行きはもはや既成事実と化していた。
イ・ガンインは6月7日に代表合流のため韓国入りしたが、その前にすでにパリでメディカルテストを受けたとも報じられた。実際、イ・ガンインはスペインではなく、フランス発の便に乗って韓国入りしたという。
第一報から約1カ月後に公式発表された今回の移籍だが、PSGはイ・ガンインの獲得を早期に確定していたようだ。
PSG公式パートナーの韓国企業関係者は、PSG関係者は6月末に韓国を訪問していたと明かす。獲得こそ公式発表しなかったが、イ・ガンインの入団を念頭に置き、マーケティングなどの調整のために韓国メーカーとミーティングをしていたそうだ。
なお、イ・ガンインはPSGにとって、いわゆる“マーケティング要員”ではないと見られる。というのも、サッカー市場の規模や商業性から見ると、韓国よりも日本の方がはるかに良い市場だからだ。
実際、PSGのアジア総括本部も韓国ではなく日本にあり、今夏のプレシーズンツアーも日本で行う。このような背景を考慮すると、イ・ガンインではなく日本人選手を獲得する方がPSGとしてはメリットがあるはずだ。
それでもイ・ガンインを選んだのは、純粋な実力だけで獲得したと見るべきだろう。マーケティングはあくまで付随的なものに過ぎず、2200万ユーロという少なくない移籍金を投資した事実からも伺える。この2200万ユーロという金額は、歴代のPSG移籍金支出ランキングで29番目となる。PSGがそれだけイ・ガンインの実力と潜在能力を高く評価した証左だろう。
公式発表まで長い時間がかかったが、イ・ガンインは韓国入りの前にパリでオフィシャル写真まで撮影していたようだ。PSGが公開した写真を見ると、イ・ガンインのヘアスタイルはパーマ前後の2種類に分かれる。
パーマをしていない写真は6月の韓国入国前に撮られたもの思われる。イ・ガンインは最近、韓国出国前にパーマをかけ、パリに到着して映像やオフィシャル写真を撮った。
6月の代表招集当時、イ・ガンインは「今は代表に招集されているので、ここに集中しなければならない。また、僕は今、マジョルカの選手だ。代表が終わったあとに移籍と残留を決める」と話したのを見ると、かなり慎重に話していたことがわかる。2戦目のあとにはミックスゾーンでのインタビューも断っていた。
公式発表まで時間がかかった最大の理由は、指揮官選びのためだ。監督が決まっていない時点で選手の獲得を発表するのは不自然だという判断の下、PSGはひとまず監督の発表を最優先としていた。
PSGは昨シーズンまでチームを率いたクリストフ・ガルティエと決別し、新監督を物色していた。前バイエルン・ミュンヘンのユリアン・ナーゲルスマンとは交渉が決裂し、その後にルイス・エンリケと組むこととなった。実際、6日にルイス・エンリケの就任を発表したあと、ミラン・シュクリニアル、マルコ・アセンシオ、マヌエル・ウガルテら相次いで新戦力の加入が発表されている。
イ・ガンインのサッカー人生第三章は、欧州屈指のビッグクラブで幕を開ける。彼の物語は、2007年に未就学児の成長を追うサッカーバラエティ『飛べ、シュットリ』(原題)に出演し、有望株の資質を見せたことで始まった。
そして2011年にスペイン・バレンシアに渡り、紆余曲折の末にラ・リーガ最高クラスの選手へと成長。バレンシアでは頭角を現せなかったものの、2022-2023シーズンにマジョルカで確かな結果を残したことで、今回PSGというビッグクラブに加入することとなった。
イ・ガンインはPSG入団に際しての公式インタビューで、「PSGは世界最高のチームの一つだ。フランスリーグを長い間見てきた」とし、「私の目標は常にチームを助けることだ。チームがすべての試合で勝ち、できるだけ多くで優勝できるよう助けたい。PSGは世界最高の選手が集まったチームだ。新しい冒険を早く始めたい。ファンに楽しさを与える日が楽しみだ」と感想を述べている。
PSGはフランスの絶対的な“1強”とも言えるクラブだ。リーグ優勝は前提で、CLで優勝トロフィーを掲げることが最大の目標となっている。イ・ガンインが世界屈指の名門で輝き、悲願達成の一助になれるのかに注目が集まる。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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