世界剣道選手権2連覇の松本弥月が語った「日韓比較」と「自分との約束」【インタビュー】

2018年10月23日 スポーツ一般

松本弥月は、間違いなく世界女子剣道界の先頭走者だ。

先月9月に韓国・仁川(インチョン)で幕を閉じた第17回世界剣道選手権大会では、女子個人戦、団体戦の2冠に輝いた。彼女は2015年に東京で行われた前回大会でも女子個人戦と団体戦を総なめしており、世界選手権が始まって48年の歴史のなかで、男女合わせて初めて2大会連続で2部門トップに立った剣客になった。

剣道宗主国である日本で、警察組織は日本の剣道の歴史で大きな役割を果たしてきた。男女を問わず、ほとんどの選手は警察官として勤務している。松本もその一人だ。福岡県出身である松本は、神奈川県警所属の警察官。剣道人のなかで最も「日本らしい剣道」を見せる選手として名を馳せている。

面打ちを得意とする彼女は、今回の世界選手権でフィジカルも一層強化されたようだ。3年前の前回大会と比較して、細身ながらも腕や肩は筋肉質になり、瞬間的なスピードと集中力が向上した。攻撃的な剣道で相手を圧倒した原動力だ。

韓国のある剣道人は、「韓国が国際大会で日本と対戦する度に不当判定疑惑を提起したりするが、松本の剣道は誰もが認めるほどだ」と話す。

『スポーツソウル』のインタビューに応じた松本弥月

松本は世界選手権後、『スポーツソウル』とのインタビューで、「3年前に初めて優勝を目指したときと心構えは同じだった。ただ、前よりもっと攻撃的な競技をしようとした」と話した。

試合中は鋭い目つきと気勢で竹刀を振り上げるが、外では天真爛漫な笑顔で周囲に親近感を持たせるのが松本の魅力だ。彼女は、開催国であり今大会最大のライバルである韓国を破ったことについて、「たくさん分析をしてくるだろうと思った。前回大会で優勝したので、韓国の選手が(私と対峙したときに)緊張するだろうし、簡単に攻撃してこないこともありうると考えた。その心理を利用した」と戦略を明かした。

実際、彼女は団体戦で見せたイ・・ファヨンとの主将対決では、序盤から相手と至近距離になるるや否や奇襲的な面打ちで点を取った。「韓国の剣道選手たちを尊重している。同じように韓国選手たちも私の剣道を尊重してくれてありがたい」と笑った。

今大会では入賞できなかったが、韓国の選手たちも優秀な成績を収めている。

3年前の東京大会では女子選手のホ・ユンヨンが準優勝、ウォン・ボギョンが3位の成績で表彰台に初めて登り、韓国女子選手の意地を見せた。日本の剣道界は、韓国の勢いに圧倒されていた。松本は、「剣道は、少しの油断も許さない。当時の結果は(集中力を発揮した韓国が勝った)当然の結果だと思った。今大会を前に(韓国との対戦が)心配だったのも事実」と話した。

ただ、当時決勝で激突したホ・ユンヨンが仁川大会を欠場したことには非常に驚いたという。

ホ・ユンヨンは最終エントリーに名を連ねたが、アキレス腱の負傷により出場できなかった。松本は、「ホ・ユンヨンは日本でも柱のような存在だ。試合に出ていなくて驚いた」とし、「日本の剣道が落ち着いて相手を崩していくスタイルとすれば、韓国の剣道はとても情熱的だ。ホ・ユンヨンが代表的であり、他の選手とも張り詰めた対決を繰り広げることになった」と強調した。

彼女の剣道哲学についても聞いた。それは世界最高の座に輝いた松本の強さの秘訣でもある。しかし彼女は、「特別なことはない。神が助けてくれたのではないか」と謙遜した。

ただ、自分との約束を明かした。

松本は、「(剣道の大会で)私を見て、気が強いとか、きついキャラクターと思う方が多い。しかし、私は正反対の気質だ」とし、「剣道をするときだけは、その日のコンディションが良くてもそうでなくても、自分自身を信じる」と述べた。

また、サインを求められるときに常に記す言葉は、「自恃」だという。「日本では“自負”といって、自分自身を信じるという意味がある。そんな気持ちが私の剣道を支えている」と語った。

全日本剣道選手権大会で6回の優勝を誇る歴代最強の剣士、宮崎正裕を最高の師匠に挙げる松本は、3年後にフランスで開かれる世界選手権3連覇を目指している。

彼女は、「剣道人を愛している。剣道をするときは敵として会うが、外では誰もが“剣友”だ。常に世界の剣友から学ぶ姿勢で挑戦する」と意気込んだ。

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