「私はとても幸せです」
学生時代のいじめ問題で物議を醸し、逃げるようにして海外への移籍を選んだ元女子バレー韓国代表のイ・ダヨン(25、PAOKテッサロニキ)が、新天地ギリシャで失った笑顔を完璧に取り戻した。
イ・ダヨンは4月17日(日本時間)、ギリシャのPAOKテッサロニキアリーナで行われたA1リーグのAEKアテネとの準々決勝プレーオフ第2戦にセッターとして先発出場し、チームのベスト4進出に貢献した。
PAOKはセットカウント3-1の勝利で、第1戦での1-3の敗北を挽回すると、ゴールデンセットではデュースの末に20-18の逆転劇を完成させた。
イ・ダヨンは、かつて韓国Vリーグ女子部の現代建設ヒルステート時代にチームメイトだったスペイン人のミラグロス・カラー(34)と抜群のコンビネーションを見せた。さらには、相手の意表を突くフェイント、180cmの長身を活かしたブロックで自ら得点にかかわった。
また、15点先取のゴールデンセットでは速攻を積極的に活用し、ベスト4進出のチケットをたぐり寄せた。
PAOKテッサロニキの公式YouTubeチャンネルでは、第2戦勝利後のイ・ダヨンのインタビュー動画が公開された。
動画を見ると、イ・ダヨンは場内アナウンサーのインタビュー要請に対し「NO,NO」と手を振り、まだ外国語に慣れていないのか照れくさそうな笑みで断った。
すると、チームメイトの一人が「あなたが韓国語で話したら私が通訳をする」とイ・ダヨンを説得し、場内アナウンサーも「韓国語で一言だけ話してほしい」と伝えた。
チームメイトと場内アナウンサーの説得でマイクを握ったイ・ダヨンは、笑顔のまま韓国語で「私はとても幸せです」と話すと、ファンに向かって「愛しています。I Love You」とメッセージを伝えた。
PAOKは当該の部分だけを編集し、「イ・ダヨンがPAOKファンに送るメッセージ」というタイトルとともに動画を公開すると、18日夕方基準で8000回を超える再生回数を記録した。
動画を視聴したギリシャのファンたちは、韓国語で「我々もあなたを愛してる」「Love You Too」などとコメントし、イ・ダヨンの挨拶に応えていた。
そんなイ・ダヨンは、元々は若くして韓国プロバレーのVリーグ女子部、ひいては韓国女子バレー界を代表する名セッターと呼ばれた選手だった。加えて、優れたルックスを備えていたことから、双子の姉イ・ジェヨン(25、PAOKテッサロニキ)とともに国内で絶大な人気を誇っていた。
ところが、Vリーグ女子部の興国生命ピンクスパイダーズに在籍していた昨年2月、イ・ジェヨンとともに、学生時代にいじめの加害者だった疑惑が浮上。
ネット上で行われた暴露ではいじめの内容も伝えられた。それも「一緒に宿舎を利用した際、“任せた仕事をしなかった”という理由でナイフで脅迫された」「“汚いから”、“臭いから”と、隣に来るなと言われた」「事あるごとにお金を取られ、腹をつねられたり、口を叩いたり、集められて拳で頭を殴られたりした」など、どれも悪質なものだった。
2人は疑惑浮上後、自身のSNSを通じて直ちに謝罪文を発表。ただ、興国生命から無期限の出場停止処分を下され、韓国バレーボール協会からも代表資格をはく奪されると、新シーズン前にフリーとなり興国生命を退団。
韓国でのプレーが事実上閉ざされた2人は、国際バレーボール連盟(FIVB)から国際移籍同意書を発給してもらった後、昨年10月にギリシャのPAOKテッサロニキに加入していた。
イ・ダヨンは韓国国内での冷たい視線を後にして、ギリシャでは早くもPAOKの看板スターとなっている。
Vリーグと国際大会で培った豊富な経験を活かしてPAOKの不動の主力セッターとなり、デビュー初年度からレギュラーリーグ3位(20勝6敗)に貢献。ポストシーズンでも持ち味の躍動的なパスでPAOKのアタックをけん引している。
結局、さまざまな議論を置き去りにしてギリシャで大成功のデビューシーズンを終えたイ・ダヨンは、かつて韓国で多くのファンを魅了した笑顔を取り戻した。イ・ダヨンにとって、海外への移籍はまさに“神の一手”となった。
(記事提供=OSEN)
◇イ・ダヨン プロフィール
1996年10月15日生まれ。韓国・全羅北道出身。身長180cm。韓国のプロバレーボール選手で、元韓国代表。双子の姉イ・ジェヨンもバレー選手で、2人ともギリシャのPAOKテッサロニキに所属している。実父は陸上競技(ハンマー投げ)韓国元代表のイ・ジュヒョン、実母はソウルオリンピック代表セッターのキム・ギョンフィというサラブレッド家系。2014年のプロデビューから2021年1月まで韓国国内で活躍していたが、学生時代のいじめ発覚で物議を醸し、無期限出場停止と代表資格はく奪処分を受けた。その後、活躍の場を求め、2021年秋からギリシャでプレーしている。
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