各メディアで多くの展望記事が出ているが、韓国メディアは今回の対決のどこに注目し、展望しているのだろうか。本紙『スポーツソウル』の野球担当記者たちの見解を紹介したい。
野球担当のナム・ソヨン記者が真っ先に挙げたのは、両国の先発投手の出来だという。日本は山本由伸、韓国ではコ・ヨンピョが先発投手を務める。
「韓国の先発のコ・ヨンピョはプロ野球KBOリーグのKTウィズ所属。今シーズンは14試合に登板し、7勝4敗(全体9位タイ)の防御率3.87(全体16位)を記録しており、KTの韓国人エースとして浮上しています。
東京五輪ではアメリカ戦で先発登板。4.2イニングを投げ、4被安打4失点を記録しました。6奪三振に加えて四球を1つも与えなかったものの、2本の本塁打を許してしまった。日本戦ではその挽回を狙っているはず」
対する山本については野球担当のユン・セホ記者が「150キロ中盤のファストボールや140キロのフォークを前面に出し、大谷翔平に続く日本屈指の右腕投手として評価しても良いだろう」と紹介していたが、そのユン・セホ記者が注目するのは山本と韓国のイ・ジョンフとの対決だ。
イ・ジョンフのことは以前に紹介したが、ユン・セホ記者の分析は興味深い。
「イ・ジョンフは日本に敗れた2019年プレミア12決勝を昨日の出来事のように覚えているらしい。そのときにまったく打てなかったのが山本だった」
ユン・セホ記者によると、イ・ジョンフはこんなことを言っていたらしい。
「山本と対戦した決勝戦最後の打席は今も鮮明に記憶している。三球三振。球種もはっきりと覚えている。フォーク、カーブ、フォークと投げてきて、フォークは140キロ以上も出ていた。今回のオリンピックでは必ずあのときの借りを返したい」
そのイ・ジョンフは東京五輪でも調子を上げている。8月1日のドミニカ戦では、1-3とリードされた9回裏、ルイス・カスティーヨを相手に同点二塁打を放った。
東京五輪の4試合含め直近の国際大会での打率は0.329。東京五輪では2番もしくは3番打者として出場しているので、日韓戦では初回から山本と対戦する可能性が高く、その山本との勝負にイ・ジョンフは燃えているとユン・セホ記者は見ている。
「韓国は日本のエースを超えられてこそ、勝利を掴みとることができる。過去の“日韓戦”もそうでした。
2000年シドニー五輪では、元巨人イ・スンヨプが8回に松坂大輔からタイムリーを放ち、日本を下して銅メダルを獲得する名勝負を生み出した。
イ・ジョンフも21年前のイ・スンヨプのように、決定的な一発を放つ瞬間を待ち望んでいることでしょう」
ユン・セホ記者がもうひとりキーマンとして挙げたのが“若き天才バッター”と称されるカン・ベクホだ。
ドミニカ戦で五輪初安打を放ったあと8月2日のイスラエル戦で4打数4安打2打点と爆発した。
「広い打撃ゾーンと高速なバットスピード、そしてパワーまですべてを備えている左打者です。2019年のプレミア12では、日本の投手を相手に5打数2安打3打点と活躍したこともある。驚異的な球威を誇る山本ですが、カン・ベクホとの勝負は長打の一発で決まる可能性もあるかもしれません」
いずれにしても緊迫した試合展開になることが予想される日韓対決。
ひとつのポイントとなるのは先制点ではないかと見ているのは、元読売ジャイアンツで韓国代表として多くの日韓戦を経験してきた韓国球界の伝説イ・スンヨプだ。2017年に現役を引退し、今回は韓国テレビ局SBSの解説委員を務めているイ・スンヨプはこう展望している。
「先制点が重要な試合になるだろう。日本での試合なので、先制点を取られたら心理戦で押されてしまうだろう」
日本の打者や走塁についても分析しつつ、「韓国もそうだが、日本も総力戦で臨むだろう」としたイ・スンヨプ。
過去の五輪でも大活躍したレジェンドだけにその展望は興味深かったが、横浜スタジアムで繰り広げられる注目のライバル対決を制するの、はたしてどちらの国だろうか。
(文=慎 武宏)
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