元韓国代表選手の自殺…スポーツ界で繰り返される悲劇に政府機関はいつまで“無策”なのか

2020年07月08日 スポーツ一般

「スポーツ分野の悪習を変えることができる最後の機会だ」

7月7日12時34分、韓国文化体育観光部から文章が送られてきた。「文化体育観光部、トライアスロン選手の人権侵害に関連する会議・ブリーフィング計画」というタイトルだった。

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去る6月26日、元トライアスロン韓国代表のチェ・スクヒョン選手が自ら命を絶つ悲劇が起きた。彼女は所属する慶州(キョンジュ)支庁トライアスロンチームの監督やチームドクターを名乗る男、そして主将など先輩選手から過度なパワハラやいじめを受けており、それを苦にしてこの世を去った。

会議は3時間後の15時30分から始まるとされ、文化体育観光部パク・ヤンウ長官を筆頭に、女性家族部次官級、最高検察庁、警察庁、国家人権委員会の関係者など主務機関がすべて集まる予定だった。

だが実際の出席者は、さらに重量感があった。女性家族部は次官級ではなくイ・ジョンオク長官が直接訪れ、警察庁チャン・ハヨン次長、最高検察庁コン・ボンスク刑事2課長、国家人権委員会スポーツ人権特別調査団キム・ヒョンス団長が出席し、1時間余りの会議が行われた。

(写真提供=文化体育観光部)パク・ヤンウ長官

迅速に会議はしたが…意味がない?

16時30分、文化体育観光部パク・ヤンウ長官は会議結果を伝えるために壇上に立った。

「これまでのスポーツ界の刷新と努力にもかかわらず、再び不幸な出来事が起きてしまった。スポーツ主務機関として重い責任を感じ、被害選手と遺族に深い謝罪を申し上げる」と頭を下げた後、「問題を根本的に解決するために各機関と対処法を共有し、今後強力な協調体制を作ろうと考えている。最後の機会だと思って若い選手が再び犠牲にならないように、政府が最善を尽くす」と説明を始めた。

しかし伝えられた大部分の対策は、同語反復にとどまった。“なぜ”悲劇が繰り返されるのかに対する把握も、“どうやって”根絶するのかも曖昧だった。

文化体育観光部は去る7月2日、事件と関連して特別調査団を設け、チェ・ユンヒ第2次官を団長に指名した。その日の午前に文在寅(ムン・ジェイン)大統領がブリーフィングを通じて、「選手出身のチェ・ユンヒ次官が前に出て全体的なスポーツ人権問題を取りまとめなさい」と指示してから、半日で特別調査団が設けられたことになる。

前述した7月7日の会議も、文大統領の「スポーツ界にある各種の不条理に対して文化体育観光部が急速に、そして積極的にこれを正す役割をしなければならない」という発言が出ると、素早く招集された。

しかし特別調査団で把握した内容についてパク・ヤンウ長官は、「去る7月2日にチェ・ユンヒ団長が大韓体育会訪問した後、特別監査に突入し、本格的な現場調査を開始した。申告処理が遅延した理由、大韓体育会の保護システムが動かなかった理由、責任者の把握などを総合的に徹底的に調査する」と、5日前と同じことを述べた。

すでに前日の国会で開かれた緊急懸案質疑を通じて対処が不十分との指摘を受けたが、“なぜ”に関する回答は出てこなかった。

6月26日にこの世を去ったチェ・スクヒョン選手

具体的な対策がないのが現状

“どうやって”についても、原則的な説明にとどまっている。

今回明らかになった各種対策は、「専門捜査チームが迅速かつ厳正に捜査する」(最高検察庁)、「スポーツ界の不法行為特別捜査団を構成し、7月9日から特別申告期間を運営する」(警察庁)、「児童・青少年性暴力専門センターである“ひまわりセンター”と相談申告電話をより積極的に運営する」(女性家族部)、「昨年の実態調査をもとに改善を勧告する」(国家人権委員会)といったものだった。

だがそれらの対策は、2019年にコーチからの性的暴行を告発したショートトラック韓国代表シム・ソクヒのときと大きく変わっていない。

今年8月に発足する独立機関「スポーツ倫理センター」が捜査権を持つということが最も注目すべき対策だが、それさえもパク・ヤンウ長官は「必要な場合は関係機関と協議した後、関連法の改正が必要だ」と言い訳を残した。

文化体育観光部は2019年、韓国スポーツ界でMeToo運動が広がると、スポーツ革新委員会を1年間も運営し、7つの勧告案と52の課題を樹立した。

故チェ・スクヒョンと彼女の家族は今年2月に大邱(テグ)地方警察庁と検察庁に、4月に大韓体育会クリーンスポーツセンターに、6月に韓国トライアスロン協会にそれぞれ被害を訴えた。しかし申告を行ってから5カ月間、どんな制度も選手を保護することができなかった。

文化体育観光部パク・ヤンウ長官の「決然とした気持ち」と「強い遺憾」だけでは、韓国スポーツ界の悪習を断つことはできない。これだけはあまりに自明だ。

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