韓国プロ野球のハンファ・イーグルスの本拠地であるハンファ生命イーグルスパークは、8回になると妙な緊張感が流れる。
球場内に鳴り響いていたスピーカーの音は消え、ただ観客の声援だけがグラウンドにこだまする。
1万人以上もの大人数による大歓声は、スピーカー応援とはまた異なる興奮を球場にもたらす。
だが、残念ながら今シーズンは生の声援をまともに感じることは難しそうだ。
韓国政府は早ければ今週末にもプロスポーツの入場を許可することに決めたが、新型コロナウイルス感染症の拡散を防ぐための最小限の安全対策を無視することはできない。
当分の間は、入場規模も観客席全体の30%を越えない程度に収める見通しだ。3席当たりに1人の割合で座席を配置するなど、“ウィズコロナ”時代の新常識となる「非接触(Untact)」を球場内にも適用させなければならない。
韓国野球委員会(KBO)側は「新型コロナが完全に終息するまでは入場者数を全座席の50%に制限するのが基本方針」と発表した。当面は、満員の観衆で埋め尽くされた球場の全景は見られなさそうだ。
ここにいくつか追加事項がある。飛沫や接触感染の恐れがある応援は自制するよう勧告する方針だ。感染リスクを最小限に抑えるため、新たな応援方法の導入が必要という意味でもある。
これによって、生の声援の代わりに韓国プロ野球ならではの新たな応援が登場するかもしれない。
“ウィズコロナ”時代の応援方法として、“マスゲーム”でおなじみのカードセクションなどが表れる可能性もある。
かつて、サッカーワールドカップでは韓国代表サポーター「レッドデビルズ」が披露したカードセクションが世界的に話題になった。
韓国プロ野球の各球団も、スティックバルーンやタオルを活かした応援には慣れている。
スティックバルーンを叩く音やタオルを活用した既存の方法に加え、本来よりも広く空いたスペースを活かせば、これまで見られなかった新たな応援が登場するかもしれない。
思い切り声援を飛ばすことのできない観客の立場としては少し息が詰まるかもしれないが、一糸乱れぬ動きで球団にメッセージを伝えるのもまた新鮮だろう。
手話による応援方法も考慮に値する。
韓国では「尊敬」を意味する手話で医療陣を応援する「おかげでチャレンジ」の流行や、中央災難安全対策本部のブリーフィングのたびに登場する手話通訳士のおかげで、手話に関して完全に不慣れなわけではない。
両手を頭上に挙げて(きらめくように)振る動作をすると、「拍手」を意味する手話になる。数千人が同じ動作をスタンドから披露すれば、野球を通じてまた新たなメッセージを伝えられるものとみられる。
観客の興奮を完全に統制することは不可能だ。スポーツにおける応援は、思い切り大声を出すことによってカタルシスをもたらすことのできる合法的な空間だからだ。
とはいえ、“ウィズコロナ”時代に合った新しい応援文化の醸成は必要だ。観客動員解禁後、韓国プロ野球でどのような形式の応援がなされることになるのか、関心が集まっている。
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