世界初のプール付き観客席や最先端設備を謳ってオープンした韓国プロ野球の新球場で安全トラブルが相次いでいる。
今年3月にオープンしたハンファ・イーグルスの新本拠地「大田(テジョン)ハンファ生命ボールパーク」が、水しぶきや看板墜落などの安全トラブルでファンの不信を買っている。
問題は“単なる設備不良”にとどまらず、管理主体による“責任の押し付け合い”へと発展している。
始まりは“プールの水しぶき”だ。同球場の目玉である4階のプール付き観客席「インフィニティプール」から溢れた水が下の観客席に降り注ぎ、ほかの観客に被害を与えたのだ。「2~3階だけでなく、1階まで水が飛んできた」と不満を口にする観客もいる。
ハンファは「排水溝に流入するプールの水を自動で調整する水位調節装置が誤作動を起こした。そのため、プールの外に水が溢れた」と説明。「現在は手動での排水処理ができるよう点検を終えた。現在は装置が正常に作動しており、再発防止に努める。ファンに迷惑をかけて申し訳なく思う」と謝罪した。
しかし、問題はそれだけにとどまらなかった。7月27日に行われたSSGランダース戦の試合中、4階一塁側で天井から吊るされていた案内看板の固定ボルトの一部が外れ、看板が落下する事故が発生。幸いにも人命被害はなかったが、今年3月に昌原(チャンウォン)NCパークで発生した構造物落下による観客死亡事故を想起させるほどの危険な状況だった。
これを受けてハンファは「直ちに大田市、施工業者の鶏龍(ケリョン)建設と協力して緊急点検と全数調査を実施し、看板全区域をワイヤーで補強した」と伝えた。だが、これはあくまでも“事後対応”に過ぎず、事前の管理体制に対する批判は避けられなかった。
では、事故の責任は誰にあるのだろうか。
そもそも、ハンファ・イーグルス自体は同球場の“借主”にすぎない。契約書には「運営・管理の主体は大田市である」と明記されている。
にもかかわらず、大田市のイ・ジャンウ市長は「運営権が球団側に移ったのなら、ハンファが管理すべき」と発言し、責任の所在を球団に押し付けるような態度を見せた。
さらに、昌原NCパークの事故をきっかけに全国の球場で行われた安全点検の際、大田市が看板の点検を行っていなかった事実も判明した。大田市の体育施設課および新球場の管理関係者は、本紙『スポーツソウル』の電話取材に「安全点検のチェックリストが不明確だった」と釈明したが、“杜撰な行政管理”が浮き彫りになった形だ。
仮に状況を単純化しても、今回の一連の事故を「球団のせい」とするのは無理がある。例えるなら、新築マンションに入居した借主の部屋で天井から水が漏れ、照明が落下したとして、その責任を借主だけに問うようなものだ。
家を建てて管理する責任が「家主」にあるように、新球場の安全面に責任を負わなければならない主体は大田市だ。“借主”の立場に過ぎないハンファにできることは限られている。
大田市はハンファと協力して追加の補強工事を行うと発表しているが、すでに明らかになった管理の不備は看過できない。水しぶきや看板落下といった問題は、“初期不良”という言葉では片づけられない。ファンの安全に関わる重大な問題であり、大田市が主体的に責任を持って解決すべき行政課題である。
派手な設備を誇る前に、まずは最も基本的な“安全”を確保すること。それが新球場に求められる最低限の責任だ。数回月前に凄惨な事故が起きたばかりなだけに、ファンも、そして球団も、これ以上不安を抱えながらこのスタジアムを訪れるようなことがあってはならない。
■【写真】20代女性ファンの頭に60kgの落下物直撃…韓国球場の死亡事故現場
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