「閉じ込められた」という表現がぴったりだった。仕事帰りに大勢のファンに囲まれるなど、“爆発的人気”が伺えた。斗山(トゥサン)ベアーズの日本人投手、白川恵翔(しらかわ・けいしょう/23)がその主人公だ。
7月14日のサムスン・ライオンズ戦終了後、蚕室(チャムシル)球場の中央出入口から地下鉄の総合運動場駅に向かう途中の道で大勢の人が殺到する事態が起きた。
人々は一人の選手を囲んでいた。その人物が白川だ。
白川は私服姿で、通訳なしで車にも乗らず、歩いて移動していた。すると、バリケードの外で待っていたファンに出くわした。
斗山ファンだけでなくサムスンファンも多くおり、あっという間に白川の周りにプロ野球ファンが集まった。道が狭く、その場を抜けようとすることも難しかった。
自身に殺到したファンに白川は少し戸惑ったようだった。前所属のSSGランダースでは、退勤途中の動線がファンは分離されている。蚕室球場はそうではなかったが、それでもサインや写真撮影など、丁寧なファン対応は怠らなかった。
ただ、一人ひとり全員にやろうかという勢いだった。人が多すぎるため、1時間程度かかる可能性もあった。
結局、状況を把握した球団のフロント職員が保安要員と一緒に出てきて、白川をエスコートして移動させた。移動する途中も多くのファンが追いかけるなど、彼の人気ぶりは凄まじかった。
紆余曲折の末、白川はようやく退勤することができた。「お疲れ様でした」と伝えると、まだ面食らった様子の表情で「はい」と答えた。それでも、最後まで笑顔を絶やさなかった。
白川は韓国プロ野球KBOリーグ史上初めて、日本の独立リーグから加入した選手だ。
2001年6月4日生まれの白川は徳島県出身の右腕投手で、池田高校を卒業して2020年から四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックスでプレー。今年5月に代替外国人選手としてSSGランダースと6週間の短期契約を結び、7月初旬まで在籍した。
代替外国人選手制度とは、各球団でチームに所属する外国人選手が6週間以上の治療が必要な負傷をした場合、復帰まで一時的に投入できる代替選手を選べるという制度である。
そしてSSG退団後、7月10日に斗山と総額400万円で自身2度目の代替外国人選手契約を締結した。
まだ23歳と若い年齢に、愛らしいルックスも人気の理由だ。韓国語で韓国語で「ジャガイモ」を意味する“カムジャ”というニックネームも付けられた。
もちろん、実力も備えている。150km台の剛速球を投げ、変化球も多彩な球種を保有している。
SSGのYouTubeチャンネルでは、白川が登場する動画が高い再生数を誇る。特に、退団に際して公開された動画は26万回再生を記録している。
斗山移籍後も状況は変わらない。斗山のYouTubeチャンネル『BEARS TV』では、白川のインタビュー動画の再生数がほかの映像を圧倒している。白川本人も、「個人SNSのフォロワーが1万人以上増えた」と驚いた様子だ。
蚕室球場で取材に応じた野球ファンは、「本当に可愛い。笑うときはなおさらだ。ボールもよく投げる。だから嬉しい」と言って笑った。
また別のファンは、白川に向かって日本語で「可愛い」と言い続けていた。
韓国プロ野球でかつて白川のような選手がいただろうか。実際のところ、彼は短期間のみチームに在籍する選手だ。
左肩甲下筋の損傷で故障者リストに入ったブランドン・ワデル(30)が回復次第、白川はチームを去る見通しだ。ただ、選手としての“インパクト”は、まさに歴代屈指と言って良いだろう。
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