プロサッカーの世界で、もはや「義理」や「ロマン」を求めるのは贅沢なのだろうか。
韓国Kリーグでは、3月の開幕から3カ月も経たずして5人の監督がチームを退いた。
Kリーグ1(1部)では全北現代(チョンブク・ヒョンデ)モータースのダン・ペトレスク監督が開幕5試合で辞任し、大邱(テグ)FCのチェ・ウォングォン監督も第7節後に成績不振を理由に辞任した。
大田(テジョン)ハナシチズンも、2021年から3年6カ月チームを率いたイ・ミンソン監督の辞任が第13節終了後の5月21日に発表された。
Kリーグ2(2部)でも、城南(ソンナム)FCがイ・ギヒョン監督を開幕3試合で解任。昨季1部最下位で史上初の降格となった水原三星(スウォン・サムスン)ブルーウィングスは、5月27日にヨム・ギフン監督の辞任を発表した。
いずれも、成績不振を理由に指揮官の座を退くことになった。
現代のプロサッカー界では、近年ますます「世論」と「民心」がより冷酷になる雰囲気を醸している。もはや「義理」や「ロマン」で監督を支持する空気ではない。
イ・ミンソン監督は、地方自治体が運営する市民クラブからハナ金融グループを母体とする企業クラブに転換した大田の1部昇格を導き、昨季は残留まで成し遂げた功労者だ。
だが、今季はシーズン序盤の不振を理由にサポーターから強い批判を受け、早々にチームを退くこととなった。
“レジェンド待遇”も存在しない。
ヨム・ギフン監督は現役時代、水原三星でリーグ通算329試合48ゴール84アシストを記録するなどの活躍で、ファンやサポーターから最も愛された伝説的な人物だったが、監督に転身してからは冷徹かつ厳格な評価を受けるようになった。
そもそも、ヨム・ギフン監督は選手兼コーチを務めた昨季終盤、監督経験ゼロの状態で急きょ監督代行を任されていた。それでもチームの降格を防げず、今季から正監督に就任していたが、やはり「出て行け」という批判からは逃れられなかった。
そして、最後はサポーターの批判に包まれるなか、短い監督生活を終えて水原三星を後にした。
Kリーグのファンは、ここ数年で積極的に意思を表明するようになった。
ゴール裏でクラブや首脳陣を批判する横断幕を掲げるのは基本で、いつのまにか“流行”になったバス囲みも珍しい光景ではなくない。甚だしくは、監督に向かって辛辣な罵詈雑言を浴びせる。
抗議の方法には議論の余地がある。ややもすると、ファンが実力行使をしていると見られるためだ。同じファンでさえも反対の声を出すほどの集団行動でもある。
首都圏に本拠地を構える企業クラブを15年間応援しているという30代男性のチョン氏は、「バス囲みは本当にしない方が正しいと思う。スタジアム内で叫ぶことだけでも意思表現が可能ではないか。長時間バスを塞いで抗議するのは暴力的に見える。暴言を浴びせるのも同じだ。スタジアムが治外法権でもないのに、礼儀は守ってほしい。一部のファンが、クラブやプロサッカー全体のイメージを悪くする」と意見を伝えた。
過激ファンの行動が理解できないわけではない。
Kリーグは近年ますます平準化し、薄氷を踏むような競争が続いている。特に、降格の恐怖を感じるチームの立場としては焦るしかない。
2部の昇格争いもますます熾烈化しており、「地獄」という表現が登場するほどだ。そして、ややもすればクラブの「ゴールデンタイム」を逃す恐れがあるという考えが、より強い抗議へとつながっていく。
何より、もはや“秘密”というのもない時代となった。ファンもクラブの事情を把握し、サッカーに関する理解度も高まった。監督を評価する基準もそれなりに設けられた。
そんななか、さまざまな理由によって、Kリーグの監督の寿命は「虫けらの命」と呼ばれるほどに短くなっている。大田を3年6カ月率いたイ・ミンソン監督が「長寿監督」と呼ばれるほどだ。
実際、現在のKリーグで3年以上チームを率いている監督は、蔚山(ウルサン)HDのホン・ミョンボ監督、仁川(インチョン)ユナイテッドのチョ・ソンファン監督、富川(プチョン)FC 1995のイ・ヨンミン監督、金浦(キムポ)FCのコ・ジョンウン監督しかいない。
殺伐とした雰囲気のなかで監督を続ける指導者たちは、精神的疲労感を訴えることも多い。実際、パニック障害に悩まされ、薬を服用する人も少なくない。
「極限職業」という表現が誇張ではないほど、監督が難しい職業であることがわかる。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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