異例のことだった。
3月20日、ソウルの高尺(コチョク)スカイドームで行われたロサンゼルス・ドジャース対サンディエゴ・パドレスの試合は5-2でドジャースが勝利した。
ところが試合後、勝利したドジャースからインタビュールームに登場するMVPの選手を教えてほしいと質問すると、「ノーコメント」で一貫した。
MVPの選手として有力な人物だったのは、やはり“スーパースター”大谷翔平(30)だ。だが、主催側はまるで“トップレベルの機密事項”であるかのように、MVPの選手を固く隠した。
その後、MVPの選手が入ってくる直前にも、「ドジャースの選手が入ってくる」とだけ言っていた。
長い時間待った末、インタビュールームに入ってきたのは、勝利投手でも敗戦投手でもなく、開幕戦で先発投手を務めたタイラー・グラスノー(30)だった。
皆が虚脱感に見舞われ、ため息をついた。会見が始まっても、グラスノーへの質問は3つ程度にとどまった。5回2失点という成績もあってか、グラスノーの会見は早々に終了した。
結局、大谷が共同記者会見場であるインタビュールームに姿を現すことはなかった。ドジャース移籍後初の公式戦でマルチヒットを放ち、盗塁まで成功させるなど大活躍を見せたにもかかわらず、だ。
ただ、大谷のインタビューがなかった理由は、翌21日に明るみに出た衝撃的な事件によって明らかになった。大谷の専属通訳を務める水原一平氏が大谷の資金に着服した疑惑が浮上したのだ。
『ロサンゼルス・タイムズ』『ESPN』『AP通信』など、アメリカ現地のメディアはソウルシリーズ第1戦終了後、「水原氏が大谷の資金、少なくとも450万ドルに着服して賭博をし、これを知ったドジャースが直ちに水原氏を解雇した」と報じた。
水原氏は北海道日本ハムファイターズで球団通訳を務めた際、大谷と縁を結んだ。その後、2017年に大谷がロサンゼルス・エンゼルスと契約した当時から専属通訳となり、大谷がドジャースに移籍したときも一緒だった。
大谷と水原氏は業務外でも親友であり、マネージャーでもあった。そんな“相棒”とも言える水原氏が、大谷の金に手を出した。
ただ、水原氏は20日の試合、通常通りチームに帯同して大谷の通訳業務を遂行していた。
ドジャースは水原氏の賭博疑惑が浮上後、「球団は通訳の水原一平氏と契約を終了した。水原氏に関してこれ以上のコメントはないだろう」と公式立場を発表した。
すでに日米間で騒々しくなっている状況だが、この問題がMLBソウルシリーズ開幕戦の祝祭ムードに水を差すようなことにはなってほしくないところだ。
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