野球そのものだった。野球の核心要素である打撃と投球、そして走塁まですべてが完璧だった。
もはや“ベーブ・ルースの転生”の肩書きもいらない。歴史上最も完璧な選手に君臨した。
侍ジャパンの大谷翔平(28、ロサンゼルス・エンゼルス)が、2023年WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の最初と最後を完璧に締めくくった。
大谷が始めて、大谷が終わらせた物語だった。
大谷は去る3月9日、東京ドームで行われた1次ラウンド初戦の中国戦に先発投手兼指名打者として出場した。マウンドでは無失点のピッチングを披露すると、打者としては4打数2安打2打点で攻守の責任を負った。大谷だけができる完璧な投打兼業で、WBCの扉を華麗に開いて見せた。
初戦以降、大会期間の2週間で大谷は常にスポットライトの中心にいた。
グラウンド上の姿だけではなく、試合前後の大谷の行動、コメント一つひとつが日本はアメリカ、そして韓国メディアのヘッドラインを飾った。アメリカへの入国当時、1次ラウンドで対戦したチェコのキャップを被った大谷の姿も話題になった。
今大会で大きな関心を集めたチェコは、野球協会のツイッターで大谷に感謝の意を表した。大谷はチェコ戦後、自身のSNSでチェコの選手たちの写真を載せるとともに、「RESPECT」と大きく記した。試合は完勝したものの、野球への情熱をWBCの舞台で見せたチェコに尊敬の念を伝えたのだ。
そして決勝、最後の瞬間も大谷が飾った。
3月22日、米フロリダ州マイアミのローンデポ・パークで行われたアメリカ代表との決勝で、大谷は9回表にクローザーとして登板した。
大谷は先頭打者のジェフ・マクニール(30、ニューヨーク・メッツ)こそ四球で塁に出したが、続くムーキー・ベッツ(30、ロサンゼルス・ドジャース)を併殺打に抑え、アウトカウント2つを奪った。そして最後の瞬間、メジャー最高の打者でアメリカ代表キャプテン、さらにはエンゼルスの同僚であるマイク・トラウト(31)と向き合った。
大谷はトラウト相手に100マイル(約160km)台の剛速球を果敢に投げた後、最後は絶妙にストライクゾーンを抜けるスライダーでトラウトを空振り三振に仕留めた。
メジャーを代表する2人の選手がWBC決勝最後の舞台で出会い、大谷が“最高の中の最高”に躍り出た瞬間だった。侍ジャパンはアメリカを3-2で下し、史上3度目の大会制覇を成し遂げた。
大谷は今大会、打者として打率0.435(23打数7安打)、1本塁打、8打点。投手として3試合2勝1セーブの防御率2.08を記録した。打者として4割越えの打率を記録し、投手としては先発から抑えまでをあまねく務めた。
ずば抜けた総力も目立った。チェコ戦で見せた果敢な三頭はもちろん、準決勝のメキシコ戦では大逆転の足場となった二塁打を記録した。アメリカとの決勝でも足を武器に内野安打で出塁した。
皆が夢に描いてきた姿を、自らの力で現実のものにした。2023年WBCの大会MVPも当然、大谷だった。
大谷を中心に繰り広げられた今回のWBCは、興行指標でも歴代最高点を記録した。前回の2017年大会より、観客動員数や視聴率、SNSを通じた大衆の関心などあらゆる点が数倍に跳ね上がったのだ。
大谷のSNSもまた、大会期間の2週間でフォロワー数が数百万人単位で爆増した。
MLBのロブ・マンフレッド・コミッショナーは決勝に先立ち、「3年後の2026年に必ずWBCを開催する」と発表した。
野球の現在であり、未来。それが大谷翔平だ。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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