ベント監督は2018年8月、韓国代表の新監督に就任した。実に約4年3カ月の間、指揮を取り続けた韓国代表史上最長寿の監督だった。
もっとも、在任期間中は紆余曲折が多かった。
始まりから不安だった。ベント監督体制初の国際大会となった2019年アジアカップではベスト8で早期敗退し、信頼を得ることができなかった。W杯アジア2次予選の過程で徐々にチームのプレースタイルは定着し始めたが、実力差のある相手に収めた成果なだけに、そこでも信頼を得られたわけではなかった。
選手選考をめぐる議論も頻繁に起こった。国内で結果を残すKリーガーに背を向け、予想もできないような選手を起用して批判を受けたこともあった。
最大の危機は昨年3月に起きた。国の自尊心をかけた“日韓戦”で0-3と屈辱的な完敗を喫し、ベント監督の進退問題まで浮上した。
右往左往とする状況のなかでも、ベント監督は粘り強く自分の道を歩み続けてきた。
自らが掲げる哲学のもと、確立したプレースタイルを完成させることに集中し、それにあった選手を継続的に招集して競争力を強化した。
その結果、W杯最終予選を例年になくスムーズに通過し、本大会出場を決めた。これにとどまらず、本大会では難敵のそろうグループHで1勝1分1敗を記録し、2位で決勝トーナメントに進出。2010年南アフリカ大会以来、12年ぶり2度目となる国外開催のW杯ベスト16入りを果たした。
疑う余地のない“ハッピーエンド”だ。直近の過去2大会で韓国は競争力を見せられなかった。いずれもW杯開幕1年前に監督が交代され、大会に向けた準備をまともにすることができなかった。
そのため、キム・パンゴン元国家代表戦力強化委員長(現・マレーシア代表監督)をはじめとする前任の指導部たちは、一人の監督で4年間強化を進めることを目標とした。そして、当時立てた目的地に代表は無事到着し、ベスト16入りという期待以上の結果を収めた。
ベント監督が挙げた成果によって、韓国サッカーの地形図は完全に変わった。