マジョルカのMFイ・ガンイン(21)は、今こそ韓国代表に必要な選手だ。
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イ・ガンインは今季のラ・リーガで水を得た魚のように躍動している。現在まで行われた4試合で計340分、1試合当たり平均85分間プレーし、確固たる主力として活躍を披露している。
実際に1ゴール2アシストと結果も出ており、1試合当たりのキーパス数も2.5回とラ・リーガ全体8位にランクイン。『WhoScored.com』のシーズン平均評価点では、「8.19」で全体1位のポーランド代表FWロベルト・レヴァンドフスキ(34、バルセロナ)に次いで「7.77」で2位につけている。
“弱点”と指摘されたスピードや守備参加、体力などすべての面を補完した。90分をフルで走り切れる体力を備え、試合終了まで積極的に守備に参加する誠実性も見せている。
過去に日本代表も指揮したハビエル・アギーレ監督は、イ・ガンインに特定のポジションで縛らせない“フリーロール”の役割を与えた。その采配が的中し、マジョルカは開幕4試合で1勝2分1敗と悪くないシーズン序盤を送っている。
イ・ガンインの影響力が、チーム全体にもポジティブな効果をもたらしている。
欧州5大リーグの一角であるスペインで優れたパフォーマンスを見せるイ・ガンインだが、皮肉にも今年11月の開幕が刻一刻と迫るカタールW杯への出場は不透明な状況にある。
韓国代表を率いるパウロ・ベント監督が、昨年3月に日産スタジアムで行われた日本代表との国際親善試合を最後に、イ・ガンインをA代表に一度も招集していないのだ。
約1年半も招集がない理由は、前述したイ・ガンインが抱える弱点にあるだろう。とはいえ、それらを考慮したとしても、あまりにチャンスが与えられていないという印象を受ける。
今季Kリーグ1(1部)得点ランキング首位のFWチュ・ミンギュ(32、済州ユナイテッド)、昨季Kリーグ1年間MVPのDFホン・ジョンホ(33、全北現代モータース)、さらにはバルセロナ下部組織出身で今季リーグ戦11ゴール3アシストと活躍中のFWイ・スンウ(24、水原FC)など、国内で際立った存在感を見せる選手がA代表に招集されない現象と似ている。
ただ、イ・ガンインは既存の選手で代わりがきくような選手ではないということをベント監督は認知しなければならない。
ベント監督の選択肢にない国内組の選手たちは、同じポジションに欧州組や既存の代表選手がいるため、必ずしも選ばれなければならないという理由はない。
しかし、現在の韓国代表にイ・ガンインと似た選手は存在しない。スペインの舞台でも通じる個人技と創造性、さらにはどんなシチュエーションでも味方のチャンスを演出する正確無比なキックを持つイ・ガンインは、今の代表にはいないプレースタイルだ。
まだポジションが近いMFファン・インボム(25、オリンピアコス)やMFイ・ジェソン(30、マインツ)も、創造的なプレーより安定感に重きを置いた選手だ。イ・ガンインのように“ゼロ”からチャンスを生み出し、自らも強力なキックを持つ選手はいない。
コーナーキックやフリーキックでも相手の脅威になるだけに、イ・ガンインの活用価値は大きいと言って良いだろう。
W杯のエントリーが既存の23人から26人に拡大したことも考慮しなければならない。
例えベント監督の“プランA”にイ・ガンインが入っていなくとも、エントリーに余裕があるのであれば、万が一の状況に備えて招集するに越したことはない。チームのスタイル上、先発出場は難しいとしても、変化が必要な局面ではイ・ガンインのような選手が必要な場合もある。
イ・ガンインとしては、9月に行われる国際Aマッチで招集されるかどうかがW杯出場を測る尺度になる見通しだ。
韓国代表は9月23日に高陽(コヤン)総合運動場でコスタリカ代表、27日にソウルワールドカップ競技場でカメルーン代表との対戦を予定している。
仮に今回も選ばれないようであれば、イ・ガンインがカタールW杯に出場できる確率は著しく落ちると言って良いだろう。
決定権はすべてベント監督が握っている。
自身の哲学に合った選手を好むのは監督の立場では当然のことだが、いくらそうだとしても、スペインの舞台で活躍している選手を“無視”することを納得できる人は多くない。
優れた選手を適材適所に活用することも、指導者として求められる能力であり義務だ。
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