主力ストライカーが“無得点”で最終予選を終えた。かつてガンバ大阪で活躍した韓国代表FWファン・ウィジョ(29、ボルドー)の話だ。
ファン・ウィジョは先日まで行われたカタールW杯アジア最終予選で計8試合に出場したが、1ゴールも決めることができなかった。
去る3月29日に行われた最終戦のUAE代表戦でも沈黙した。ファン・ウィジョには2度、決定的なチャンスが訪れたが、一つは味方のクロスに触ることができず、もう一つはゴール前でのヘディングシュートがポストを叩いた。
韓国自体はFWソン・フンミン(29、トッテナム)をはじめ別の選手が分散して得点を挙げ、最終的に残り2試合の時点で本大会出場を決めたものの、「ファン・ウィジョの無得点」はしっかりと指摘しなければならない要素として残ることになった。
ファン・ウィジョはここ最近、代表でこれといった活躍ができていない。
例えゴールを入れられなくとも、優れたパフォーマンスで味方のチャンスを多く演出できれば、それほど大きな問題になることはない。ただ、最近のファン・ウィジョは本来の能力にふさわしくないプレーに終始している。
試合への関与度そのものが好調時と比べて落ちている。相手DFとのフィジカルバトルで苦戦し、持ち前の鋭い動き出しが鈍くなる試合を繰り返している。
こうした状況でこそ、得点が生まれれば復調のきっかけとなったはずだ。だが、それさえもできなかったために、さらにパフォーマンスが落ちてしまう“悪循環”にファン・ウィジョは陥ってしまったと指摘する声もある。
現役時代に京都パープルサンガ(現・京都サンガF.C.)でもプレーした元韓国代表で、現在はKリーグ1(1部)の水原(スウォン)FCで指揮を執るキム・ドギュン監督は、代表で苦しむファン・ウィジョの現状を見て次のように語った。
「得点ができなくてもチームの役に立てれば問題はない。ただ、そうでなければゴールを決めてパフォーマンスを引き上げるしかない。だが、ファン・ウィジョはそのどちらもできていないようだ。主力ストライカーが8試合で1点も決められなかったという部分は、問題があると考えなければならない」
ファン・ウィジョが所属するボルドーは現在、フランス1部リーグ・アンで降格危機に追い込まれている。
チームの戦力もリーグ内で優れた方ではなく、組織力も砂粒のようなものだ。リーグ戦では直近7試合で2分5敗と約2カ月近く勝利がない。ファン・ウィジョはチーム最多の10ゴールを挙げ、得点ランキング6位タイに位置しているが、その奮闘も虚しくチームは低迷している。
何より、ボルドーと代表とではスタイルがまったく違う。
ボルドーは試合を主導し、ボールを支配するということがほとんどなく、カウンターやファン・ウィジョのミドルシュートが主な得点パターンとなっている。
一方、代表ではファン・ウィジョが密集したスペースで数人のDFを相手にしなければならない。2トップであれば負担は減るものの、1トップとなるとこなすべき役割も増える。
所属チームでまったく異なるプレーをした後、代表に合流してたった1~2日のチーム練習だけで試合に臨まなければならないとなれば、当然、ファン・ウィジョにとっては負担になるしかない。
もっとも、ファン・ウィジョの現在の不振をW杯本大会に直接関連付ける必要はない。
これまで、ファン・ウィジョは代表合流のためフランスと韓国を多く行き来してきた。1日だけチーム練習に参加して試合を戦うパターンがほとんどであり、時差ボケやコンディション不良など、さまざまな要素を考慮する必要があった。
ただ、W杯本大会となれば話は違う。代表は大会に向けて長期間の招集を行い、開幕に合わせてコンディションを集中的に引き上げる。そのため、本大会でファン・ウィジョが本来のパフォーマンスを発揮できる可能性は十分にある。
済州(チェジュ)ユナイテッドを率いるナム・ギイル監督は、ヴォルフスブルクやマインツ、アウクスブルクで活躍した元韓国代表MFク・ジャチョル(33、済州ユナイテッド)のケースを例に挙げ、次のように述べた。
「ク・ジャチョルも欧州時代、所属チームと代表を行き来することが本当に難しかったと話している。私の考えも同じだ。だからこそ、W杯では違った姿を見せるかもしれない。ファン・ウィジョがこれまで披露してきたパフォーマンスを考えると、W杯で不可能と断定することが難しい」
また、韓国でリーグ・アンの中継を担当するSBSスポーツのキム・ドンワン解説委員も、「所属チームでの活躍はそれほど悪くない。チームがあまりにも不振に陥っているだけで、ファン・ウィジョのパフォーマンスそのものが目立って落ちたわけではない。深刻に考える問題ではないだろう」と伝えた。
ファン・ウィジョのパフォーマンスを疑う理由はまったくない。ただ、チームにおいて競争は必要不可欠なものだ。
現時点で同ポジションの最大のライバルと言えるのはFWチョ・ギュソン(24、金泉尚武)だろう。
昨年から現代表の確固たる控えストライカーとして招集を受けているチョ・ギュソンは、豊富な運動量と積極的なフィジカルバトルを長所としている。
これまでの国際Aマッチでは得点力を認められるほどの活躍を見せられずにいるが、今季Kリーグ1では6試合4ゴールと絶頂の得点感覚を誇り、得点ランキング単独首位を走っている。
チョ・ギュソンは新型コロナウイルス感染のため、最終予選最終戦のUAE戦に出場することができなかった。ただ、次回以降の国際Aマッチでは再び招集を受けるだろう。
1998年生まれの24歳とまだ若いチョ・ギュソンはその成長ぶりが明確だ。今の成長スピードであれば、W杯本大会までにはさらに優れたパフォーマンスを備える可能性が高いだろう。
キム・ドギュン監督は、「チョ・ギュソンとファン・ウィジョに50-50のチャンスを与えるのも良いと思う。チョ・ギュソンはすでにそれだけの水準に達している。ファン・ウィジョにも良い意味で緊張感を与えられるはずだ」とストライカーの競争を促した。
また、ナム・ギイル監督も、「(チョ・ギュソンは)代表の主力としてプレーできると思う。それだけ成長したという意味だ。プロ入り前、高校時代のチョ・ギュソンをテストしたことがあるが、当時からはるかに決定力が向上した。(金泉尚武で兵役中の今は)軍隊でフィジカルも身に着け、自信も手に入れたようだ」と太鼓判を押していた。
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