京都国際OBで元広島のシン・ソンヒョンが語った覚悟、“心を無”にして掴むチャンス【インタビュー】

斗山(トゥサン)ベアーズのシン・ソンヒョン(31)は、今後二度と訪れないであろう大きなチャンスを目の前にしている。

その理由は、昨冬にフリーエージェントの資格を得た大砲オ・ジェイルが、サムスン・ライオンズへと発ったからだ。さらに、強打者のチェ・ジュファンもSSGランダースに移籍し、内野のポジションに空きが生じたことも大きい。

相次ぐ主砲の退団により、これまで斗山ベアーズの厚い選手層によってチャンスを掴めなかったシン・ソンヒョンが、満を持してチームの主力へとステップアップする可能性が開かれたわけだ。

シン・ソンヒョンは現在、正一塁手の座をキム・ミンヒョクと争っているが、外野手としてのトレーニングも並行して行っており、様々な守備位置での出場機会を虎視眈々と狙っている。オフの間も汗を流していたという彼は今、最大の難題である「心を無にする」努力をしているという。

甲子園出場校が母校のシン・ソンヒョンとは?

幼い頃、日本のプロ野球に憧れていたというシン・ソンヒョンは、高校進学を機に来日。京都国際高校へと入学した彼は、1年時から頭角を表し始め、チームの主力選手へと順調な成長を見せていた。

斗山ベアーズのシン・ソンヒョン

高校卒業後は広島カープの入団テストに合格し、2008年にドラフト4位で入団。晴れて憧れだった日本プロ野球の舞台に進むも、一度も1軍昇格できないまま2013年に戦力外通告を受けることとなってしまう。

その後は韓国に戻り、独立球団の高陽(コヤン)ワンダーズ、漣川(ヨンチョン)ミラクルを経て、2015年にハンファ・イーグルスに育成選手として入団。のちに正式契約を結び、満塁本塁打2本を放つなどの活躍を見せ、本来持っていたポテンシャルを開花させ始めた。2016年には若手選手のオールスターゲームでMVPを獲得するなど、韓国で順調なプロ生活を送っていた。

そして2017年にトレードで斗山ベアーズへと入団した当時、シン・ソンヒョンは大いなる成長が見込まれた有望株の1人だった。

斗山ベアーズ側も、控え捕手だったチェ・ジェフンの代わりとして、不足していた右の大砲の獲得に満足していたという。

しかし、その大きな期待とは裏腹に、シン・ソンヒョンは思ったほどの成長や活躍を見せることが出来なかったのだ。

特に、苦手としていた内角に落ちる低目の変化球という弱点を克服できず、1軍に彼の姿はなかった。

当時を振り返りシン・ソンヒョンは、「心理的に焦り続けていたし、余裕が全然なかった。打席に入ると(相手投手ではなく)自分自身と戦っていた。上手くやらなければというプレッシャーが大きかった」と過去を振り返っている。

斗山ベアーズのシン・ソンヒョン

そんなうまくいかなかった過去を糧に、シン・ソンヒョンは未来へと歩み始めた。

過去の苦い経験を糧に語った覚悟

シーズン開幕を控えた現在、バッティングについては選球眼を鍛え、守備では一塁手、左翼手としての練習に邁進しているという。オープン戦前の練習試合では左翼手として出場し、実戦感覚を養った。

シン・ソンヒョンは、「(処理が)難しい打球はまだ飛んできていない。実戦で大きな問題はなかった」と照れくさそうに笑った。

続いて、「シーズンが開幕すると、ナイターもこなさなければならない。高く打ち上がった打球が照明と重なる場合もあるので難しいだろう」と緊張を緩めなかった。

(写真=斗山ベアーズ公式SNS)2021年春季キャンプで打撃練習をしているシン・ソンヒョン(右)

現在の斗山ベアーズにとってシン・ソンヒョンは、キム・ミンヒョクとともに右の大砲として期待がかかっている。

今年で31歳を迎える彼にとって、今回のチャンスは絶対に逃せないという思いも強そうだが、「頑張らなきゃという考えは捨てる」と語っており、これはこれまでの失敗から学んだ教訓だという。 

そして、「長打もあまり意識しない。良いタイミングでうまくバットに当てれば、ボールは勝手に飛んでいく。できるだけ“心を無”にして新シーズンを迎えたい」と冷静ながらも熱い覚悟で締めくくった。

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