惜しい銀メダルだが、よく戦った。“韓国陸上界の看板スター”ウ・サンヒョクが再び新たな歴史を描いた。
ウ・サンヒョクは9月16日、東京の国立競技場で行われた「東京2025世界陸上選手権大会(以下、世界陸上)」の男子走高跳決勝で2m34をクリアし、銀メダルを獲得。2022年オレゴン大会銀に次ぐ2個目のメダルを手にした。世界陸上で韓国人選手がメダルを2個獲得するのはウ・サンヒョクが初めてだ。
なお、金メダルはニュージーランドのハミシュ・カーで2m34、銅メダルはチェコのヤン・シュテフェラで2m31だった。日本勢は赤松諒一が2m24で8位入賞、瀬古優斗が2m20で10位に入った。
韓国勢初の世界陸上メダリストは、2011年大邱(テグ)大会の男子20km競歩で銅メダルを獲得したキム・ヒョンソプ。以降、ウ・サンヒョクが韓国勢2個目、3個目のメダルを連続で得ている。
14日の予選で2m25を超え、全体3位で決勝に進出したウ・サンヒョク。決勝では2m20、2m24を1回目でクリアし、2m28と2m31は2回目で成功した。
大きな山場となったのは2m34。1回目と2回目は失敗するも、3回目で見事にバーを越え、大きな雄叫びを上げた。助走前に「できる!」と自らに言い聞かせた言葉が原動力となった。
その後、カーも3回目の試技で2m34を成功させ、金メダルはカーとウ・サンヒョクの一騎打ちに。ウ・サンヒョクは2m36に挑み1回目で失敗すると、カーは2024年パリ五輪王者らしく、1回で跳び切り勝負を決めた。ウ・サンヒョクはバーを2m38に上げて勝負に出たが、2度の挑戦はいずれも失敗に終わった。
金メダルは逃したものの、ウ・サンヒョクとしては納得のいくパフォーマンスだった。今季はこれまで出場した7つの国際大会すべてで優勝し、昨年のパリ五輪で味わった7位入賞の悔しさを乗り越えて復活を証明した。
ただ先月、ふくらはぎの筋膜損傷を負って治療に専念。この間に正常なトレーニングはほとんどこなせず、通常時と比べ調整不足の状態で今大会に臨んだ。
予選では2m16を1回目に失敗。負傷の影響が残っているかに見えたが、すぐに立て直し決勝へ駒を進めた。そして、決勝ではさらに調子を上げ、自らを信じて跳び続けた。精神的なプレッシャーを抱えながらも獲得した銀メダルは、金メダルにも匹敵する価値があるだろう。
ウ・サンヒョクは1996年4月23日生まれの29歳で、龍仁(ヨンイン)市庁に所属。前述の世界陸上銀メダル2個のほか、世界室内陸上で金メダル2個、アジア選手権で金メダル3個など多くの国際大会で結果を残している。4位入賞を果たした2021年東京五輪では、テレビ朝日のメインキャスターを務めた松岡修造氏がウ・サンヒョクを熱心に応援する姿がSNS上で注目を集めた。
前へ
次へ