韓国Kリーグで優勝候補と目された2クラブが苦しんでいる。今月開幕のAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)にも出場する王者・蔚山(ウルサン)HD FCと名門FCソウルのことだ。
2025年シーズンのKリーグ1は第28節終了時点で全北現代(チョンブク・ヒョンデ)モータースが首位。それも19勝6分3敗の勝ち点63、2位の金泉尚武(キムチョン・サンム/勝ち点46)と“17差”という独走ぶりで、2021年以来4年ぶり10回目の優勝をほぼ確実なものとしている。
Kリーグ1ではスコットランドなどと同じ「スプリット方式」が採用されている。第1節から第33節までを全12チーム3回総当たりで行った後、「ファイナルラウンド」として第34節から第38節までを上位と下位6チームずつ2グループに分け、各チーム5試合ずつ実施する形式だ。上位グループでは優勝やACL出場権を争い、下位グループでは熾烈な残留争いが繰り広げられる。
そんななか、現時点で10勝10分8敗の勝ち点44とし、12チーム中5位に位置するのがFCソウルだ。順位では上位グループ圏内にいるものの、7位の江原(カンウォン)FC(勝ち点38)との差はわずか2。今後の展開次第で下位グループに転落してしまう可能性がある。
8月のリーグ4試合を1勝1分2敗と負け越したFCソウル。その要因は明白で、夏に主力センターバックのDFキム・ジュソン(24)がサンフレッチェ広島へ移籍してからというもの、守備が“崩壊状態”にあるのだ。
キム・ジュソンとCBコンビを組んだヨルダン代表DFヤザン・アルアラブ(29)も不安定なパフォーマンスに終始しており、直近4試合で12失点。8月17日の金泉尚武戦で2-6という大敗もあったが、1試合当たり平均3失点という惨状だ。
守備が不安定さは攻撃にネガティブな影響を及ぼしている。夏にKリーグトップレベルの外国人FWと評価されるブラジル人FWアンデルソン・オリベイラ(27)を獲得し、キャプテンの元イングランド代表FWジェシー・リンガード(32)も復調傾向にあるが、期待されたような“シナジー”は生まれていない。
8月31日のFC安養(アニャン)戦では、途中出場したMFリュ・ジェムン(31)の不用意なボール処理から失点に繋がり、1-2の敗戦を喫するなど、各選手の“闘争心”や終盤の“集中力”の面で相手に劣っていた。
ただ、より深刻なのはKリーグ3連覇中の王者・蔚山だ。今夏のクラブW杯にも出場した蔚山はここまで9勝7分12敗、勝ち点34の8位。入れ替え戦圏内の10位・水原(スウォン)FC(勝ち点31)とはわずかに3差と、2部降格の危機に直面しかねない状況に陥っているのだ。
7月末にキム・パンゴン前監督を解任し、8月よりインドネシア代表前指揮官のシン・テヨン監督が新たに就任したが、チームは直近3連敗中。毎試合で時間が経過すればするほど、守備陣と中盤3列目の間隔が開き、相手にチャンスを与え、攻撃面の戦術不足が如実に表れている。
特に、8月30日の全北とのライバル対決「現代家ダービー」では、ボール支配率37%、枠内シュート0本でスコア0-2という“屈辱の完敗”を喫した。今夏新加入のブラジル人FWマルコン(31)に依存する単調な攻撃が続き、守備ではDFキム・ヨングォン(35)を中央に据えた3バックを敷いたが、効果は大きくなかった。
シン・テヨン監督はこれまで韓国のU-23代表やA代表、インドネシア代表を率い、数々のピンチを乗り切る“火消し役”を務めてきたが、代表とクラブとではまったくの別物。何より、Kリーグでの指揮は2012年の城南一和(ソンナム・イルファ/現・城南FC)以来13年ぶりなだけに、戦術やリーグ環境の変化に対応する時間が求められている。
だが、降格の可能性がちらつく現状で冒険的な試みをする余裕はない。ACLエリートとリーグ戦を並行して戦うシーズン終盤、蔚山は当面「現実的な戦い方」を模索する必要がある。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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