韓国の製パン工場で発生した労働者死亡事故の余波で、プロ野球とのコラボパンが“不買運動”の標的となる事態が起きている。
事故は去る5月19日、京畿道始興市(キョンギド・シフンシ)にある大手食品企業「SPCサムリプ」の製パン工場で発生した。協力会社の社員が工場内の機械に巻き込まれ、命を落としてしまったのだ。
SPCの系列会社では過去にも労働者が死亡する事故が発生していることから、消費者の間では同社の製品全般に対する“不買”の世論が広がっている。
こうしたなか、SPCサムリプが韓国プロ野球KBOリーグとコラボ販売している「KBOパン」にも矛先が向けられた。
「KBOパン」は韓国プロ野球全10球団のマスコットをパッケージにあしらったキャラクターパンで、今年3月の発売以降、人気商品として絶大な注目を集めてきた。
4月末時点で累計販売数が1000万袋を突破するなど、「SPCサムリプ史上最大のヒット商品」とも呼ばれた。
しかし、前出の死亡事故をきっかけに、プロ野球ファンの間では「選手の顔をSPCの“イメージ洗浄”に利用するな」との批判が高まり、“KBOパン不買運動”が本格化している。
事故翌日の20日には、「KBOパンに反対するKBOファン一同」と名乗るグループがオンライン署名活動を立ち上げるなど抗議の動きが広がっている。
一部のファンは「繰り返される人命事故にもかかわらず、SPCとの協業を強行したKBOを糾弾する」とし、「我々の声を届けるためにトラックデモを計画している」と表明。すでにデモ実施のための募金活動も並行しているという。
とあるファンも「事故とは無関係な選手たちが、企業PRの手段として消費される現実が苦々しい」と不買運動への賛同を示し、別のファンも「KBOがコラボを解消する意志がなければ、ファンが動くしかない」と語っている。
対して「KBOに全責任を負わせるのはやりすぎだ」という意見もあるが、ファンコミュニティ全体では「繰り返される労働事故への怒りが限界に達している」という空気が強まっている。
KBOはこの騒動に対し、「人命事故が発生したことについて非常に遺憾に思っている」としたうえで、「本事案は内部で検討中であり、ファンの意見を傾聴している」との見解を示した。
一方、SPCサムリプ側は現在まで公式声明を明らかにしていない。
過去には同グループ傘下の「PARIS BAGUETTE」や「Dunkin' Donuts」でも労災問題が浮上しているだけに、今回の工場死亡事故を受けて、グループ全体に対する消費者の不信感が再び高まっている。
今季の韓国プロ野球は過去最速ペースとなる230試合実施時点で観客数400万人超えと、歴代屈指の盛り上がりで注目を集めている。
だが、突如として発生した“コラボパン不買運動”が、こうした人気に少なくない影響を及ぼしそうだ。
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